技術と人間のインタラクションを考えるためには人間の基礎的な性質を知ることが必要である。本科目では心理学的な基礎知識、特に生産の現場やインターフェースの設計において重要な知覚・認知・運動について、現実の場面と関連づけながら学ぶ。
本講義終了時には
(1) 人間の認知プロセスについての基礎知識を習得している。
(2) 人間の認知的特性の産業上の応用について基礎知識を習得している。
(3) 人間の合理性と非合理性についての考察ができる。
(4) 心理学という科学的方法と、心理学実験の方法を理解している。
認知科学, 認知心理学, 記憶, 知覚, 注意
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
講義ではあるが、活発な討論を期待する。中間テストを1回、期末テストを1回行う。
ガイダンス、イントロダクションに続き、メインのPart 1 (第3回~第12回) では情報処理アプローチ(認知主義)について学ぶ。人間の認知を情報処理装置としてモデル化するこのアプローチには現在では多くの批判があるが、工学的に人間をモデル化する際には依然として広く用いられている。よってこの分野の古典として基礎知識を学ぶ。Part 2 (第13回~第15回)では、ポスト認知主義として認知主義への批判と、それ以降のアプローチ、特に感情などについての新しい動向について学ぶ。さらに心理学実験の基礎的な知識を習得するとともに、実際の実験に参加し体験する。
講義の中でも演習やミニ実験を織り込み、講義内容の理解を深める。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 授業ガイダンス | 授業の目的や方法、評価基準等を理解する。 |
第2回 | 序論: 心理学が「科学」になるまで | 科学的方法とは何かを考え, 心理学が科学的方法として成立するまでの歴史を理解する。 |
第3回 | 認知プロセス:Overview | 認知プロセスの概観を理解する。 |
第4回 | 知覚(第1回):信号検出理論 | 信号検出理論を理解する。 |
第5回 | 知覚(第2回):ビジランスタスク | 信号検出理論を応用しビジランスタスクの性質を理解する。 |
第6回 | 注意(第1回):注意の種類 | 認知資源と注意を理解し、注意の種類を知る。 |
第7回 | 注意(第2回):視覚サンプリング+中間試験 | 視覚サンプリングの性質と、設計への応用を理解する。 |
第8回 | 記憶(第1回):作業記憶と長期記憶 | 2つの種類の記憶の性質を理解する。 |
第9回 | 記憶(第2回):作業記憶の限界 | 作業記憶の容量および保持時間の限界を理解する。 |
第10回 | 意思決定 | 人間の意思決定のプロセスを理解し、様々なヒューリスティクスやバイアスがあることを学ぶ。 |
第11回 | 行動選択(第1回): 反応時間と情報処理速度 | 反応時間に影響を与える要因を学び、Hick-Hyman の法則を理解する。 |
第12回 | 行動選択(第2回): 情報スループットモデルの限界 | 情報スループットモデルの限界を理解する。 |
第13回 | 心理学実験(講義) | 心理学における実験について基礎を学ぶ。 |
第14回 | 心理学実験(演習) | 心理学実験とはどのように行われるかを体験的に理解する。 |
第15回 | 認知主義への批判と新しい研究の動向 | 認知主義に対するさまざまな批判を学び、今世紀の新しい研究の動向について学ぶ。 |
Wickens, C. D., & Hollands, J. G. (2000). Engineering Psychology and Human Performance (3rd ed.). Prentice Hall.
Norman, D. A. (2004). Emotional Design. Basic Books.
必要に応じて資料を配布。
中間試験(40%)、期末試験(40%)、および授業への参加(20%)を評価する。
インダストリアル・エンジニアリング(IEE.C202)を履修していること。または同等の知識があること。
梅室 博行
umemuro.h.aa[at]m.titech.ac.jp