遠く古代へと視線を投げながらも現代へと直結するトピックを重点的にセレクトし、比較経済分析の手法で分析する。文明の発展の諸相・世界の格差の原因・マルサスの罠と産業革命・ナショナリズムの必要性と異文化衝突など、応用可能性の広いテーマを取り上げる。さらに担当教員の専門分野である江戸時代探求においては、実際にどんなナマの史料からデータ構築と分析を積み重ねて歴史の具体像を引き出すにいたるのか、歴史制度分析の手法の実施例を提示する。
そのことで、さまざまな社会制度が今まで人の活動をどのように促進したり制約したりしてきたのかを歴史的な観点から理解し、経済学のもろもろの着眼点や分析手法が、実際にどのように歴史の実例に応用可能なのかを体得するのが本講義のねらいである。
世界史/日本史双方の分野に理解を深めつつ、歴史上の諸現象を経済史の視点から分析することができるようになる。その結果、制度の設計や改善のための着眼ポイントを習得し、目先の現象にとらわれず、時間軸と空間軸を大きく設定して社会をとらえる力を会得する。
歴史学 比較制度分析
専門力 | ✔ 教養力 | コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
スライドやプリントをベースに歴史上の事例を紹介したあと、それをどのように理解するか、受講者からのフィードバックを交えつつ進行し、最後に15分程度の時間をとって小課題を仕上げる。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | ガイダンス | 世界をグラフで把握してみる |
第2回 | ブラック・スワン | 異常現象を「異常」と認識できない人間の性 |
第3回 | 文明誕生 | 大陸の配置が人類の発展を規定した |
第4回 | 文明崩壊 | イースター島にグリーンランド 環境破壊で滅んだ文明の例 |
第5回 | ゲーム理論家の新知見 | ヨーロッパ商人のインセンティブ解明 |
第6回 | 産業革命後 | Great Divergence(大いなる分岐)は、なぜもたらされたか |
第7回 | ナショナリズム | 教育の必要性が国家の争いへとつながる悲劇 |
第8回 | ボトム・ビリオン | 母なるアフリカの大地に最底辺の10億人が生きる |
第9回 | 中国かインドか | アメリカの次の覇者と目される国々の経済事情 |
第10回 | 資本主義の未来 | 定常型社会という流行語の内実 |
第11回 | 視野を日本へ | 戦国時代のなかに生まれた秩序 |
第12回 | 江戸探求Ⅰ | 公儀の貨幣政策 |
第13回 | 江戸探求Ⅱ | 商人たちの生存戦略 |
第14回 | 江戸探求Ⅲ | 明治へと継承されたもの |
第15回 | まとめ | 比較制度分析の手法の有効性 |
プリントを配布する。
そのつど提示する。
毎回、講義内容に関連した小課題が提示される。それぞれの歴史事象の分析法の理解度と、それを応用する発想力を鍛えるための小課題である。基本的には講義時間内に書けるレベルであるが、数回程度のホームワークもある。それら小課題と中課題の達成度を点数評価し、総計を最終得点とする。
なし
yamamuro.k.aa[at]m.titech.ac.jp
随時来訪可。