情報通信分野では信号をべき級数や三角関数の和によって表現することにより、その振る舞いを分析したり、線形システムの入出力関係を周波数領域で分析する信号解析の考え方は必須です。本講義では、そのような方法の基盤となる複素関数論からスタートし、テイラー展開とローラン展開、周期関数のフーリエ級数展開、フーリエ変換、標本化定理、離散時間フーリエ変換、ラプラス変換等の計算原理や応用例を学び、信号とシステムを解析するための基本的な方法を修得します。
講義と演習を通して,以下の能力を習得することを目標としています。
1) 複素関数を数学的に正しく扱えるようになる。
2) 代表的な信号解析手法であるフーリエ級数,フーリエ変換,ラプラス変換の考え方や計算原理を理解する。
3) 信号や線形システムにおける周波数解析の意味を理解し、広く情報通信工学に応用することができるようになる。
線形システム, 固有関数, 複素解析,オイラーの公式,複素微分,コーシー・リーマンの方程式,正則関数,複素積分,コーシーの積分定理,コーシーの積分公式,コーシーの留数定理,ローラン級数展開,テイラー級数展開,フーリエ級数展開,複素フーリエ級数展開,フーリエ積分,フーリエ変換,標本化定理,離散時間フーリエ変換,ラプラス変換,微分方程式,積分方程式,線形時不変システムの周波数応答
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
週に2回の講義と1回の演習を行う。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 信号とシステム解析への招待: 線形システムの固有関数 | 線形システムの固有関数について説明せよ。 |
第2回 | 複素数:四則演算,オイラーの公式 | 実数体を複素数体に拡張するアイディアを説明せよ。オイラーの公式について説明せよ。 |
第3回 | 複素関数:連続性,微分可能性,コーシー・リーマンの方程式,正則関数 | 2変数実関数の微分可能性と複素関数の微分可能性の関係について説明せよ。 |
第4回 | 正則関数と複素積分:グリーンの定理,コーシーの積分定理,コーシーの積分公式 | コーシーの積分定理とコーシーの積分公式について説明せよ。 |
第5回 | テーラー展開とローラン展開 | テーラー展開とローラン展開の関係について説明せよ。 |
第6回 | 留数の定理と定積分への応用 | 留数の定理と定積分への応用法について説明せよ。 |
第7回 | 複素関数論に関する補足 | 複素関数論に現れる諸定理の関係について説明せよ。 |
第8回 | フーリエ解析と信号処理 1 | フーリエ級数とフーリエ変換を信号処理の立場から説明せよ。 |
第9回 | フーリエ解析と信号処理 2 | 標本化定理と離散時間フーリエ変換の関係について説明せよ。 |
第10回 | フーリエ級数1:三角多項式近似, フーリエ級数展開,収束条件 | 三角多項式近似とフーリエ級数の関係, およびフーリエ級数展開の各点収束定理について説明せよ。 |
第11回 | フーリエ級数2:ギブスの現象,パーセバルの等式,直交関数展開 | ギブスの現象とパーセバルの等式について説明せよ。 |
第12回 | フーリエ変換:フーリエ変換とフーリエ逆変換の導出,パーセバルの等式,畳込積分定理 | フーリエ変換とフーリエ級数展開の関係について説明せよ。 |
第13回 | ラプラス変換 1: ラプラス変換と逆変換, ラプラス変換の基本性質と計算公式 | ラプラス変換とフーリエ変換の関係について説明せよ。 |
第14回 | ラプラス変換2: 微分方程式と積分方程式への応用 | ラプラス変換が微分方程式と積分方程式に応用できることを説明せよ。 |
第15回 | ラプラス変換3:線形システムの過渡解析への応用 | ラプラス変換を線形システムの過渡応答解析に応用せよ。 |
応用解析学の基礎 新装版 -複素解析,フーリエ解析・ラプラス変換, 坂和 正敏 著, 森北出版, 2014.
必要に応じて、補足用講義資料を配布する。
到達目標の達成度を期末試験(8)と演習(2)によって評価する。カッコ内は数字はおおよその評価重みを表す。
原則として情報通信系所属学生に限って履修を認める。