本講義では、回路解析で必要な時間領域と周波数領域の解析を学ぶ。そこで、フーリエ変換とラプラス変換を学ぶ。そして、線形性や時不変性の概念を学んだ後に線形時不変回路における周波数応答を修得し、規模の大きな回路の組織的な解析法として節点解析、閉路解析、さらに2端子対回路の表現方法とその性質を学ぶ。また、回路素子が空間の1点に集中している場合だけでなく空間に渡って分布している分布定数回路も必要になる。さらに回路設計で重要な概念となるインピーダンス整合についても学ぶ。本講義では集中定数回路及び分布定数回路の時間領域動作や周波数領域動作の基本的な考え方を理解し、線形回路の解析方法の基礎を修得する。
現代の情報システムを支える電子回路の設計や解析を行うためには線形回路の基礎知識が必須となる。線形回路は電子回路設計の基礎であると同時に、その考え方は電子回路以外の線形システム設計にも幅広く応用できるので、その解析手法に習熟してほしい。
本講義によって次のような能力を修得する。
1) フーリエ変換とラプラス変換を使用して回路解析ができるようになる。
2) 線形時不変回路を解析できるようになる。
3) インパルス応答、ステップ応答を理解できるようになる。
4) 2端子対回路の解析ができるようになる。
5) 分布定数回路を理解し、利用できるようになる。
6) インピーダンス整合の概念を理解し、回路設計において考慮できるようになる。
線形時不変回路、ラプラス変換、インパルス応答、分布定数回路、インピーダンス整合
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
授業は毎回前回の復習を行った後に多くの例題を使いながら各回の内容を説明し、最後に発展的内容を述べる。授業最後に演習問題を提示する場合がある。
授業計画 | 課題 | |
---|---|---|
第1回 | 線形回路とは | 線形回路の概念の説明 |
第2回 | フーリエ変換とその性質 | 周波数領域の概念の説明 |
第3回 | ラプラス変換とその性質 | ラプラス変換による微分方程式解法及びその解法によるLCR回路の取り扱いの説明。 |
第4回 | 回路の線形性と時不変性 | 線形性と時不変性の概念の説明 |
第5回 | 線形時不変回路の周波数応答(畳み込み積分、振幅特性、位相特性) | 畳み込み積分の説明と周波数応答との関係の導出 |
第6回 | 節点解析と閉路解析 | 節点解析と閉路解析の手法の説明と例題による解法の説明 |
第7回 | 線形時不変回路の安定性及び線形時不変回路の時間応答(インパルス応答、ステップ応答) | 線形回路の安定性の説明とインパルス応答、ステップ応答の説明 |
第8回 | 理解度確認の総合演習 | 第1回から7回までの理解度の確認と到達度評価 |
第9回 | 2端子対回路とその表現(Z行列、Y行列、F行列、S行列、相互接続) | Z行列、Y行列、F行列、S行列等を例題を利用して説明 |
第10回 | 2端子対回路の性質(可逆定理、2端子対リアクタンス回路の性質) | 例題を利用した可逆定理、2端子対リアクタンス回路の説明 |
第11回 | 2端子対回路の構成 | 2端子対回路の代表としてフィルタの種類と特性について説明 |
第12回 | 分布定数回路と集中定数回路 | 分布定数回路の概念の説明とその微分方程式の導出 |
第13回 | 分布定数回路の周波数応答 | 分布定数回路の周波数応答の説明 |
第14回 | 分布定数回路の反射と透過 | 分布定数回路で起こる反射と透過の説明及び類似した他の物理現象の説明 |
第15回 | 最大電力伝送定理とインピーダンス整合 | 分布定数回路によるインピーダンス整合及びその概念で説明できる他の物理現象の説明 |
とくに定めない。必要に応じて授業中に資料を配布する。
高木茂孝著、線形回路理論、朝倉書店 (ISBN 978-4-254-22163-3)
柳澤健、回路理論基礎、電気学会(ISBN4-88686-204-7 C3054)
線形時不変回路の解析方法を習得したことを中間試験、期末試験により評価する.
中間試験,期末試験ともに50点満点である.
交流回路を履修しているか、同等の知識があること
中本高道:nakamoto[at]nt.pi.titech.ac.jp (内線:5017)
高木茂孝: takagi[at]ict.e.titech.ac.jp
随時。事前にメールまたは電話で連絡して来室すること。