新規な電子・光・磁気材料とデバイスに関する基礎研究を行うためには固体中の電子の振る舞いの理解は欠かせない。本講義では、結晶中の電子の波動的な側面に焦点を当て、光によって固体がどう励起され、その結果、どのような光学的性質が生じるかを学ぶ。その目的を効果的に達成するために、Kronig-Penney model の計算を体験いただきながらエネルギーバンドについての理解を深め(前半)、速度方程式の計算を体験いただきながら、光励起に引き続いて起こるエネルギー緩和現象に関する理解を深める。
1. 電子軌道を波動で表現することの妥当性を理解する
2. 凝集系(結晶固体)のエネルギーバンドの意味に精通する
3. 「エキシトン」によって光誘起分極の概念を理解する
4. 量子サイズ効果の概念を理解する
5. 光から固体へのエネルギー移動過程と時間領域を理解する
クローニッヒ・ペニーモデル、エネルギーバンド、エキシトン、量子サイズ効果、超高速現象
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
前半部では電子軌道を波動で表現することの妥当性を理解する。各人にクローニッヒ・ペニーモデルを使った計算を実行いただき、結果を持ち寄って妥当性を検討することによって凝集系(結晶固体)のエネルギーバンドの意味に精通し、光が固体結晶と相互作用するときの物理的基礎を理解できるようにする。後半部では、幾つかの専門書から抜粋した資料と記念碑的論文から選んだ課題について検討し、固体中の光励起について理解を深める。課題に応じてグループ討論を導入する。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 序論I:固体中の電子波、クローニッヒ・ペニーモデルの計算I (説明と宿題) | 実際の計算を実行うるためのクローニッヒ・ペニーモデルの理解 |
第2回 | 序論II:固体を考える際にどうしてE-k分散を用いるのが合理的か? | N個の電子の中から1個の電子を選んで励起することは可能か? |
第3回 | クローニッヒ・ペニーモデルの計算II (宿題結果呈示、議論) | バンド構造と結晶セルの大きさの関係を議論する |
第4回 | エネルギーバンド構造:直接および間接バンドの起源 | 純度の高いシリコン結晶はなぜ効率的に発光できないか? |
第5回 | 光誘起分極とエキシトン | 光励起の基礎、電子‐正孔対生成 |
第6回 | 量子閉じ込め効果:エネルギーバンドの変調とエキシトンに対する効果 | 状態密度の導出、光吸収スペクトル、2次元エキシトン、それらのデバイス応用 |
第7回 | 超高速現象 | 電子が光からエネルギーを受け取るための所要時間は?受け取ったエネルギーを失う時間は? |
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
宗片が用意するテキストを使用する
(1) Introduction to Solid State Physics, C. Kittel, 6th or later Eds.
(2) Semiconductor Optics, Ginsberg
議論 (40 %) と 講義で提示された課題のレポート (60 %)。カッコ内の比率はあくまで目安である。
受講生は講義「光と物質基礎論I」あるいは同等の講義、もしくは初等固体物理の講義を履修済み、ないしは、固体物理学の基礎的知識を有する、ということを前提に組み立てられてある。
宗片によって用意されるテキストは専門書と記念碑的学術論文から選抜された内容で構成されている