I. A/D・D/A変換の原理と,基本仕様,主要なアーキテクチャ,要素回路(ビルディングブロック).A/D・D/A変換器における諸問題と性能の関係.デルタシグマ変調技術とデルタシグマ型A/D・D/A変換器の動作について理解する.
II. PLLの基本的動作原理を理解し、各要素回路(電圧制御発振器・位相比較器・チャージポンプ・分周器・ループフィルタ)の動作や伝達関数の導出および解析を通してPLLに対する理解を深める.
III. 電源回路の目的や種別を理解し、レギュレータやバンドギャップリファレンス回路について学ぶ。交流から直流への変換、直流から直流への変換を行う電源回路について理解する.
現在の電子機器における信号処理のほとんどはディジタル回路で行われますが,実世界で扱う信号はアナログであるため,ディジタルとアナログのインターフェースとしてアナログ・デジタル(A/D)変換器やディジタル・アナログ(D/A)変換器は重要な回路となっています.特定周波数の信号を発生させる位相同期ループ回路(PLL)や,電子機器全体に電力を供給する電源回路は,電子機器で必ず用いられますが,ディジタル回路に完全に置き換えることが技術的に難しいためアナログ回路技術が使われています.
本講義は,アナログ電子回路の応用技術であるA/D・D/A変換器,PLL,電源回路の原理や基本性能を説明できるようにすることを目的とします.これらの回路のスペックシートを理解し,目標性能をもとに基本的な設計ができるレベルに到達することを目標とします.
対応する学修到達目標は、
(1) 【専門力】基盤的な専門力
(4) 【展開力】(探究力又は設定力)整理及び分析できる力
(7) 幅広い専門知識を習得し,より高度な専門分野や他分野に自ら学修を広げる力
アナログデジタル変換回路,デジタルアナログ変換回路,位相同期ループ回路,電源回路,インターフェース回路
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
講義の後半で,その日の教授内容に関する演習問題に取り組んでもらいます。
授業計画 | 課題 | |
---|---|---|
第1回 | A/D・D/A変換と基本動作 | 基本動作,標本化,エイリアシング,量子化 |
第2回 | D/A変換器 | 主要なD/A変換器の動作と特徴 |
第3回 | A/D変換器 | 主要なA/D変換器の動作と特徴 |
第4回 | A/D・D/A変換器用ビルディングブロック | A/D変換器やD/A変換器を構成するための要素回路の動作や諸性能,積分非線形性誤差(INL),微分非線形性誤差(DNL),単調性 |
第5回 | A/D・D/A変換における諸問題 | 動的特性(SNR,SFDR,THD,SNDR),有効ビット(ENOB),Figure of Merit (FoM) |
第6回 | デルタシグマ変調技術 | オーバーサンプリング技術とΔΣ変調の原理と動作 |
第7回 | デルタシグマ型A/D・D/A変換器 | ΔΣ型変換器の動作と課題 |
第8回 | 理解度確認総合演習 | A/D変換器とD/A変換器の演習・解説 |
第9回 | PLLの概要 | PLLの動作の理解 |
第10回 | 電圧制御発振器・位相比較器・チャージポンプ・分周器・ループフィルタ | 電圧制御発振器・位相比較器・チャージポンプ・分周器・ループフィルタの動作の理解 |
第11回 | PLLの伝達関数 | PLLの伝達関数の導出とその理解 |
第12回 | PLL演習および解説 | PLLの演習と解説 |
第13回 | 電源回路の概要・レギュレータ | 各種電源回路の動作の概要の理解 |
第14回 | AC-DCコンバータ | AC-DCコンバータの動作の理解 |
第15回 | DC-DCコンバータ | DC-DCコンバータの動作の理解 |
松澤昭 『応用電子回路工学』電気学会
未定
A/D変換回路,D/A変換回路,PLL,電源回路に関する理解度を評価する.
講義中の演習(20%),中間試験(40%),期末試験(40%)で成績を評価する.
電気回路第一,電気回路第二,アナログ電子回路を履修していること,または同等の知識があること.