心理物理学的方法によりユーザの主観的経験と外界環境の物理量の関係をロバストかつ量的に測定することは,機器の使い心地やデザイン等を最適化するための重要な技術の一つである.ここでは心理物理学的測定に基づく脳科学の最新の話題を紹介すると同時に,ヒトの内的処理過程を計測する手法とその産業場面での応用,限界を議論する.
ヒトの主観的経験に関して科学的に理解すると同時に,それらの科学的計測手法を学び,ヒトの脳機能の検討といった基礎科学的目的のみならず,ヒトの人工物に対する感性評価等応用目的にも広く柔軟に対応できることを目指す.
この科目は,学修目標の
1.【専門力】基盤的な専門力
の修得に対応する.
脳科学,感覚知覚心理学,視覚,触覚,体性感覚,マルチモーダル知覚,心理物理学的測定方法,身体性
✔ 専門力 | 教養力 | ✔ コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
毎週ヒトの知覚過程に関連したデモンストレーションを実施し,学生は自らの心身で何らかの体験や経験をしながら,それについて説明を受け英語で議論する.大規模モーションキャプチャ施設やfMRIなど,授業で取り上げる幾つかの測定機器を見学に行くことがある.
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | ヒトの視知覚過程と内部モデル,ヒトの眼はどこまでカメラと違うか | ヒトの眼とカメラの違いを理解する. |
第2回 | 眼球運動と注意,ユーザビリティテスト,脳の情報処理容量上限 | ヒトの眼球運動と視覚的注意について理解する. |
第3回 | 色彩視,3D立体視,その応用例 | ヒトの視覚をコンピュータビジョン等周辺領域に応用する例を理解する. |
第4回 | バイオロジカルモーション,モーションキャプチャ技術とロボットのしぐさ | バイオロジカルモーションによりヒトの身体動作ないししぐさが持つ情報量の多さを理解する. |
第5回 | 能動触・受動触,マルチモーダル情報処理過程と触覚バーチャルリアリティ | 情報提示機器設計とマルチモーダル知覚過程の関係を理解する. |
第6回 | 心理物理学的測定方法と脳機能計測方法,脳情報の可視化 | 様々な心理物理学的測定方法と脳機能計測手法,脳の可視化技法を理解する. |
第7回 | 脳と機械の中の幽霊,自己身体知覚過程,社会脳と心の理論,機械による脳や身体機能の拡張とハッキング | 「私」という感覚や意識が脳と身体という物質から生まれる仕組みを理解する. |
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
なし
配布資料参照のこと.
提出物80%,講義中の議論への参加20%とする.
認知心理学と感覚知覚科学,統計学の基礎的な知識が必要.
より理解を深めるために「脳の計測」実習と併せて履修することが望ましい.