航空宇宙分野や発電分野を中心とした多くの産業分野で高温高圧環境にたえる耐熱構造材料が必要とされ,さまざまな金属,合金,セラミック,あるいはそれらの複合材料が用いられている.このような高温材料の材料選定,強度設計,保守管理,寿命予測のためには,材料がどのような負荷を受け,その結果として,材料の中でどのような変形と破壊が生じるかを的確に把握することが重要になる.本講義では,高温強度の支配因子,高温での材料の弾塑性変形挙動,クリープ,高温疲労,熱疲労・熱機械疲労について紹介しながら,高温材料の強化機構やそれに基づく合金設計,余寿命推定方法とその課題について講義する.
この講義では,高温であるがゆえの特殊さを意識しながら,高温強度の支配因子,高温での材料の弾塑性変形挙動,クリープ,高温疲労,熱疲労・熱機械疲労について理解し,高温材料の強化機構やそれに基づく合金設計,余寿命推定方法の今後の課題と解決策を考察する方法を習得する.
本講義を履修することによって次の能力を習得する.
1)高温材料が置かれる使用条件の過酷さを説明できる,
2)高温環境での変形・破壊メカニズムを説明できる,
3)変形・破壊メカニズムに対する理解を通して,高温材料の損傷評価と寿命推定法について説明できる,
4)高温材料の強度設計の基礎を理解し,最近の技術課題について説明できる.
高温材料,金属,合金,セラミックス,変形,破壊,弾性変形,塑性変形,クリープ,疲労,熱疲労,合金設計,強度設計,損傷評価,余寿命評価
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
講義の中で適宜演習を交えながら授業をすすめる.
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 高温とは - 高温材料が受ける負荷 - 高温材料が受ける損傷 ―高温材料強度学の難しさ | 高温材料の用途とその使用環境について理解する, |
第2回 | 高温強度の支配因子 ―耐熱金属材料の種類と用途 ―高温材料の強化機構 | 実用化されている耐熱金属材料の種類とその用途を知る,各種耐熱金属材料の強化機構を理解する. |
第3回 | 高温における材料の変形挙動 - 高温での引張特性 - 高温材料の弾塑性変形挙動 - 高温材料のクリープ変形挙動 | 高温での引張特性と許容応力について理解する.高温での降伏条件と繰返し負荷下での弾塑性変形の基礎について理解する.クリープ変形挙動の基礎について理解する. |
第4回 | 高温での弾塑性破壊力学 - き裂先端近傍の応力場と応力拡大係数 - 弾塑性破壊力学とクリープ変形 | 線形破壊力学の基礎の復習と確認.弾塑性破壊力学の適用範囲について理解し,クリープ変形の破壊力学的取扱い方について理解する. |
第5回 | クリープ破損と疲労破損 - クリープ変形とクリープき裂進展 - 繰返し変形と疲労き裂進展 | クリープ変形と繰返し変形について,その変形プロセスとき裂進展挙動の相違を理解する. |
第6回 | 高温疲労と熱疲労 - 高温下での繰返し変形と時間依存現象 - クリープと疲労の重畳下での変形と破壊 - 熱応力と熱疲労 | クリープと疲労が重畳する環境での変形・破壊プロセスとその評価手法について理解する.熱応力の発生過程と熱疲労現象について理解する. |
第7回 | 高温材料の強化機構と材料開発 - 耐熱鋼の強化機構と用途 - Ni基超合金の強化機構と用途 | 実用化されている高温材料の強化機構と合金設計の基礎ならびにその用途と現状の課題を理解する. |
第8回 | 高温材料の損傷評価と寿命予測 - 損傷発達機構と寿命予測 - 損傷評価と非破壊検出 | 高温材料の損傷評価技術と寿命評価方法について理解する.構造物の寿命評価に対する現状の課題を把握する. |
必要に応じて指定する.
必要に応じて指定する.
各回の演習課題(50%)と最終レポート(50%)で評価する.
履修の条件は特に設けないが,関連する科目を履修していることが望ましい.
阪口基己(sakaguchi[at]mep.titech.ac.jp)
メールで事前に予約すること.