機械もしくは構造物を設計する際には、その構造健全性を保証するために、構造材中の初期欠陥と使用中に発生するき裂を想定することが必要となる。また、運用中に損傷が検出された場合には、破壊力学的手法により機械および構造物の健全性を改めて評価する必要がある。本講義では破壊力学の基礎を復習した後に、様々な分野で行われている健全性評価の手法を紹介する。具体的な講義項目は、応力拡大係数、き裂先端塑性域、破壊靭性、破壊抵抗、Dugdale model, J積分、破壊評価線図、疲労き裂、応力腐食割れ、安全寿命設計、フェールセーフ設計、損傷許容設計などである。
本講義でははじめに、過去に発生した機械/構造物の破壊事故事例を振り返り、エンジニアが事故から学んだ材料に関する知見を学ぶ。次に、主に構造にき裂が発生する場合を対象として、構造健全性評価に必要となる応力拡大係数、J積分、破壊靱性、破壊評価線図等と、機械と構造物の設計段階および運用段階における構造健全性保証の考え方を修得する。
構造健全性評価に必要な破壊力学の基礎的な知識を理解し、機械と構造物の設計段階および運用段階における構造健全性保証の考え方を修得することを到達目標とする。
応力拡大係数、き裂先端塑性域、破壊靭性、破壊抵抗、Dugdale model, J積分、破壊評価線図、疲労き裂、応力腐食割れ、安全寿命設計、フェールセーフ設計、損傷許容設計
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
講義形式で授業を進める。毎回、授業に関係する宿題をだす。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 破壊事故事例、構造健全生評価の流れ | 過去に発生した機械/構造物の破壊事故事例を振り返り、エンジニアが事故から学んだ材料に関する知見を復習する。また、主に材料にき裂が発生した場合を対象として、構造健全生評価の流れを紹介する。 |
第2回 | 応力による破壊評価、応力拡大係数 | 応力ベースでの破壊評価法とその適用条件を説明する。 応力拡大係数の概念を説明する。 |
第3回 | 応力拡大係数による破壊評価 | ハンドブックを利用した応力拡大係数の算出法を説明する。応力拡大係数ベースでの破壊評価法とその適用条件を説明する。 |
第4回 | 時間依存形破壊 | 応力拡大係数を用いて疲労き裂と応力腐食割れの進展を予測する方法説明する。 |
第5回 | 時間依存形破壊に対する設計思想 | 時間依存形破壊を想定した安全寿命設計、フェールセーフ設計、損傷許容設計の考え方について説明する。 |
第6回 | J積分 | 応力拡大拡大係数が適用可能な線形破壊力学の領域を超えて破壊評価する際に必要なパラメータであるJ積分の概念を説明する。 |
第7回 | J積分およびCTODによる破壊評価 | J積分ベースでの破壊評価法とその適用条件を説明する。き裂先端開口変位(CTOD)の概念とCTODを用いた破壊評価法も説明する。 |
第8回 | 破壊評価線図を用いた破壊評価、構造健全生評価の実例 | 破壊評価線図(2パラメータ法)を用いた破壊評価法を説明するとともに、配管溶接部に発生した応力腐食割れに対する構造健全生評価の例を紹介する。 |
特になし
Michael Janssen他著 『Fracure Mechanics』 Spon Press、 ISBN-13: 978-0415346221
小林英男著 『破壊力学』 共立出版、ISBN-13: 978-4320081000
小林英男著 『構造健全性評価ハンドブック』 共立出版、ISBN-13: 978-4320081536
小林英男著『破壊事故』共立出版、ISBN-13: 978-4320071650
構造健全性評価の考え方と構造健全性評価に必要な破壊力学の基礎に関する理解度を評価する。小レポート(40%)・最終レポート(60%)で成績を評価する。
材料強度学(MEC.C331.E)の知識があること。