ヒトの主観的経験の科学的計測方法を学ぶことは,ヒトの脳機能の研究のみならず,情報提示機器や各種インターフェースのデザインや使い心地といった人工物のユーザ体験を評価する上でも重要である.この講義ではヒトの8つの異なる脳機能に関連して,自分自身を被験者とする基礎的な実験心理学的測定方法を実習し,自らデータ解析し,得られた結果に関して脳科学的知見を踏まえてレポートを作成する.
1.脳科学の現場で基本的に扱われる8種類の主観的経験を自らの脳と身体で体感する.
2.ヒトの主観的経験を定量的・客観的に計測・評価する方法や理論を学び,自らを被験者とすることでその測定精度や測定に伴う制約を理解できる.3.統計学や実験計画法,フィルタ処理の知識を実際のデータを用いて実践できる.
4.得られた計測・評価データに対して,どのような脳科学的解釈・説明が試みられているか基礎科学的知識を得ると同時に,バーチャルリアリティや情報提示機器,照明機器,医療機器といった人工物のヒトに対する感性評価への応用可能性を理解できる.
脳科学,心理物理学,モーションキャプチャ,眼球運動,SD法,感性評価,視野反転眼鏡,EEG,fMRI
✔ 専門力 | 教養力 | ✔ コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
毎回一つのテーマに沿って学生自らが自分を被験者とする実験を実施する.授業内,もしくは授業後,学生はデータを取得し,自ら統計処理して期限内にレポートを提出する.
授業計画 | 課題 | |
---|---|---|
第1回 | 脳の可塑性の測定 -視野反転眼鏡- | 身体動作とフィードバックの関係に対する脳の可塑性を理解できる. |
第2回 | 言語による感性の評価と測定 -SD法,多変量解析- | 言語を用いた感性評価方法と統計学的手法が理解できる. |
第3回 | 眼球運動計測 | 眼球運動データの可視化と読み方を理解できる. |
第4回 | 等価値,閾値の推定 -心理物理学的測定方法,恒常法,調整法,極限法等- | 心理物理学的測定方法を理解できる. |
第5回 | 反応時間と正答率による注意・不注意の測定 -カクテルパーティー効果,視覚的探索,変化盲- | 注意の測定方法と眼球運動との違いを理解できる. |
第6回 | 身体運動の測定 -モーションキャプチャとバイオロジカルモーション- | モーションキャプチャと床反力計について理解できる. |
第7回 | 脳波と筋電の測定 | EEGと筋電について理解できる. |
第8回 | fMRIによる脳の撮像 | fMRIと脳の個人差について理解できる. |
なし
適宜参考資料を配布する.
出席とレポート.
認知心理学と感覚知覚科学,統計学の基礎的な知識が必要.