本演習では,簡単な3自由度ロボットアームを用いて,メカトロニクス機器の構成要素を理解し,座学で学んだ制御理論をコンピュータ制御で実践する演習・実験である.ロボットアームを構成するメカトロニクス要素(減速器,アクチュエータ,センサなど)の基礎知識を提供する.制御のために必要なデータの取得方法と,モータの駆動方法を提供する.逆運動学,コンプライアンス制御といった産業用マニピュレータに求められている制御方法を提供し,これらを用いて3自由度ロボットアームの動作と制御を実践させる.
メカトロニクスは機械工学と電気工学を融合させた学問であり,これにより機械要素だけでは実現できない機能を電子回路,センサ,アクチュエータ,コンピュータなどと組み合わせることで可能とする.構成要素を一見して確認できるシンプルな3自由度ロボットアームを用いることで,メカトロニクス機器の構成が理解できる.学生自ら作成した位置制御プログラムを用いてロボットアームを動作させることで,メカトロニクス機器の機能と動作が理解できる.座学では直観的に理解しにくいPID制御の各役割はプログラム中のパラメータを変化させることで体感できる.
「メカトロニクス工学」や「モデリングと制御」の講義で学んだことに関して,次の点を中心に演習と実験を実施し,レポートにまとめる.
1.ロボットの構成要素
2.制御の基礎
3.制御系の設計
4.逆運動学
5.障害物回避制御
6.コンプライアンス制御
7.摩擦補償,重力補償
本演習を履修することによって以下の能力を修得する.
1.ロボットの構成要素であるエンコーダ,モータ,モータドライバ,アナログ-デジタル変換回路,制御用プログラム言語などを理解できる
2.PID制御の比例制御,積分制御,微分制御を学び,各制御法の役割と違いを理解できる.
3.ロボットのステップ応答実験から伝達関数を求め,PID制御系のパラメータを設計できる.
4.ロボットの逆運動学問題を理解し,ロボットの位置決め制御ができる.
5.ロボットの逆運動学の数値解を求め,ロボットの障害物回避制御ができる.
6.ロボットアームの力を制御するコンプライアンス制御ができる.
7.ロボットの摩擦補償と重力補償を行い,補償の効果を理解できる.
この科目は,学修目標の
1. 【専門力】基盤的な専門力
3. 【コミュニケーション力】論理的に表現でき,尊重しあうことができる力
5. 【展開力】(実践力又は解決力)基本的な問題を解決できる力
の修得に対応する.
PID制御,運動学,逆運動学,ヤコビアン,コンプライアンス制御
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
各回の前半で理論と原理を講義し,後半で講義内容に関する演習・実験に取り組んでもらいます.各回の学習目標をよく読み,課題を行って下さい.
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | ロボットの接続方法と制御方法 | ロボットの制御に必要な装置の概要について学ぶ. |
第2回 | PID制御の基礎 | PID制御について学び,PIDそれぞれの役割を体感する. |
第3回 | PID制御系の設計 | PID制御系のパラメータを決定し,PID制御系を設計する. |
第4回 | ロボットの逆運動学問題とPTP制御 | ヤコビアンの有用性を学ぶ. |
第5回 | 逆運動学問題の数値的解法と障害物回避制御 | 動作範囲内に障害物があった場合の回避方法を学ぶ. |
第6回 | ロボットのコンプライアンス制御 | 外力が加わった場合に柔らかく関節を逃がす制御方法を学ぶ |
第7回 | ロボットの摩擦補償と重力補償 | 摩擦を測定し摩擦補償を行う.重力を計算し,重力補償を行う. |
配布資料を用いて講義します.
講義資料はOCWにアップロードする.
参考書:基礎メカトロニクス,培風館/システム制御の基礎と応用,数理工学社
各週の実験・演習への出席とそのレポートにより評価する.
・実験と演習の取組状況40%,レポート60%.
MEC.I331 : メカトロニクス工学(機械)とMEC.I312 : モデリングと制御を履修していること,あるいは,それに相当する知識を有することを条件とする.プログラムが組めること.数式処理が主となるので特定の言語に精通している必要はない.