本科目は社会基盤施設建設の基礎材料の特性と力学的基礎に焦点をあてた実験講義であり、特に土と地盤工学に関する実験を行う。
土は、土粒子、水及び空気から構成される材料であり、土粒子固有の性質(構成鉱物,粒子形状など)以外に構成状態(密度、含水量、飽和度など)によっても圧縮性、強さあるいは透水性等の力学的性質が変化する。盛土やアースダムなどの土構造物の設計・施工で用いられる締固め試験は人工的に構成状態を変化させ、不飽和土の締固め特性を知ろうとするものである。また、土粒子と土粒子の間には間隙があり,水はそこを流れることができる。この水の浸透しやすさを評価する試験が透水試験である。飽和した粘土は土粒子と間隙水の二相材料である。土の自重あるいは新たな付加荷重の作用によって土に含まれる間隙水は一部抜け出し、土は間隙を減じて密になり、付加荷重の増加分,有効応力が増加し最終的に力の釣り合う状態に落ちつく。この現象が圧密であり、圧密過程の計算に必要な諸定数を求めるために圧密試験を行う。
地盤工学は理論と実挙動が必ずしも正確に一致する分野でない。そのため実験を通して土の特性、土構造物の挙動を計測、観測することは極めて重要である。この講義では,一軸圧縮試験及び一面せん断試験によって支持力、土圧、斜面安定などの古典的な安定解析に必要不可欠な土のせん断強度を得る。また、これらの実験結果と与えられる非排水三軸圧縮試験結果から応力履歴、現在の間隙比や応力状態が、土の強度・変形特性に与える影響を理解する。これらの力学実験より得られた結果を基に、基礎構造物の提案を行い、模型実験を行うことにより予測と実際の差を確認する。
社会基盤構造物の基礎となる地盤の力学的特性について、講義で学習した内容を実験により確認するとともに、技術開発で求められるマネジメントを理解し、土木技術者としての素養を涵養することが本講義のねらいである。
本講義を履修することによって次の能力を修得する。
1)締固め特性に及ぼす土の粒度の影響,水の果たす役割、そして締固めによる力学特性の変化を説明できる
2)土の間隙の大きさがその透水性に及ぼす影響と基本的な液状化のメカニズムを説明できる
3)圧密終了時の圧密圧力と間隙比の関係や正規圧密状態と過圧密状態の概念などの飽和粘土のせん断強度推定における最も重要な基礎特性を説明できる
4)土の間隙の大きさや応力履歴が砂質土および粘性土のせん断特性に及ぼす影響を説明できる
5)圧密試験,一軸・三軸試験結果を用いて支持力の評価を行い、基礎の設計に関する技術ノウハウを組み合わせ戦略を具現化できる
地盤材料,土質力学,地盤構造物
✔ 専門力 | 教養力 | ✔ コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
グループに分かれての実験実習を行います。グループごとに指定された部屋に集合し、講義内容の理解度を確認する前試問を行った後、実験室にて実習、必要に応じて適宜後試問を行います。各回レポート課題が課されます。
授業計画 | 課題 | |
---|---|---|
第1回 | 締め固め試験 | 締固めの機構および締固めた土の強さの要因 |
第2回 | 透水試験,液状化試験 | 土の間隙の大きさがその透水性に及ぼす影響と基本的な液状化のメカニズム |
第3回 | 圧密試験、塑性限界・液性限界試験 | 圧密現象の理解と、飽和粘土のせん断強度推定にお ける重要な基礎知識を得る |
第4回 | 粘土の一軸圧縮試験,砂質土の一面せん断試験 | 間隙比や応力状態が、土の強度・変形特性に与える影 響の理解 |
第5回 | 粘土地盤上の基礎の変形・破壊実験(遠心模型実験による支持力コンテスト) | 各自で支持力改善プランを提案し、実際に遠心模型実 験で検証する |
担当教員が準備した講義用資料を用いる(初回に配布)。
『土質試験ー基本と手引き(第二回改訂版)』、地盤工学会、ISBN978-4-88644-084-6
山口柏樹著『土質力学(講義と演習)』、技報堂出版、ISBN:978-4765513425
木村孟、日下部治編『新土木実験指導書』、技報堂出版、ISBN:978-4765515184
石原研而、木村孟著『土木工学大系 8 土質力学』、彰国社、ISBN:4-395-40008-6
レポート(100%)。ただし演習講義のため全出席が前提である。
土質力学第一(CVE.C201)、土質力学第二(CVE.C202)、土質基礎工学(CVE.C310)を履修していること、または同等の知識があること。
各実験はグループ単位で順不同に行います。各グループの実験スケジュールはガイダンス時に提示します。