今やスマートフォンから LTE や WIFI を通して他国のクラウドサーバにアクセスするのは日常生活の一部 になっているが,その背景には無数の革新的な要素技術が絶妙なバランスで統合されている.本講義ではそ れぞれの要素技術の歴史的背景や基本原理,長所と短所,堅牢性や拡張性の背景にある考え方を学習する ことで普段なにげなく使っている計算機ネットワークに対する本質的な理解を深め,より発展的なネット ワークの業務や研究を遂行するための素地を提供する.
本講義を受講することで以下の能力を習得することができる.
1. 計算機ネットワークを参照モデルの視点から階層的に説明できるようになる.
2. 有線伝送や無線伝送におけるデジタル変調と多重化の原理を説明できるようになる.
3. データの誤りを検出・訂正できるようになる.
4. 各々のプロトコルの短所や限界を理解し,適切に選択できるようになる.
5. パケット交換方式,ルーティング,TCP/IP の基本概念を理解し,これらの要素技術の意義を説明できるようになる.
6. 暗号化技術の原理を理解し,その脆弱性を判断できるようになる.
有線伝送媒体,無線伝送,デジタル変調,多重化,誤り検出,誤り訂正,チャネル割り当て問題,イーサネッ ト,無線 LAN,スイッチング,ルーティング,輻輳制御,UDP,TCP,DNS,電子メール,ウェブ,ネッ トワークセキュリティ,対称鍵暗号,公開鍵暗号,デジタル署名,認証プロトコル
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
毎回の講義の前半で前回の演習問題の解答を解説する.講義の後半ではその日の講義内容に関する演習問 題を解く.各回の学習目標をよく読み,予習・復習を必ず行うこと.
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 計算機ネットワークの基本概念 ハードウェア・ソフトウェア,参照モデル | ネットワークの種類と参照モデルを理解し プロトコル階層と各層の設計課題 |
第2回 | 物理層1 有線伝送と無線伝送 | 物理チャネルの特性を理解し データ通信の理論的基礎を理解 |
第3回 | 物理層2 デジタル変調と多重化 | ベースバンド伝送と通過帯域伝送, 電話網,携帯電話システムを説明できる |
第4回 | データリンク層1 誤りの検出・訂正 | 誤りの検出・訂正のしくみを理解し 検出・訂正符号の計算ができる |
第5回 | データリンク層2 データリンク・プロトコル | データリンク・プロトコルの種類, 各プロトコルを定量的に評価できる |
第6回 | メディア・アクセス副層1 ブロードキャスト・チャネル | 多重アクセス・プロトコルを理解し データ・レートを計算できる |
第7回 | メディア・アクセス副層2 無線 LAN,Bluetooth, RFID | 個別のプロトコル・スタックを理解し データリンク層スイッチングを理解 |
第8回 | 理解度確認総合演習 (中間試験) 第1回から第7回までの内容の演習形式による確認 | 第1回から第7回までの理解度確認と 到達度自己評価 |
第9回 | ネットワーク層1 ルーティング・輻輳制御 | ルーティングの種類を理解し 輻輳制御手法を説明できる |
第10回 | ネットワーク層2 インターネットとサービス品質 | インターネットの制御プロトコルを理解し ネットワーク間の接続について説明できる |
第11回 | トランスポート層1 トランスポート・プロトコルの要素 | 誤り制御とフロー制御を理解し 輻輳制御について説明できる |
第12回 | トランスポート層2 UDP と TCP | TCP の信頼性を理解し TCP のコネクション管理を説明できる |
第13回 | アプリケーション層 DNS, 電子メール, www | DNS, 電子メール, www のしくみを理解し ストリーミング,P2P について説明できる |
第14回 | ネットワークセキュリティ1 対称鍵暗号,公開鍵暗号 | 暗号アルゴリズムを理解し SHA-1,2 と RSA について説明できる |
第15回 | ネットワークセキュリティ2 デジタル署名,認証プロトコル | 電子メール,Web のセキュリティ の脅威について把握できる |
“Computer Networks (5th edition)”, A.S. Tanenbaum, D. J. Wetherall 著, Prentice-Hall, ISBN-13:978-0132126953
“コンピュータネットワーク (第5版)”, A.S. Tanenbaum, D. J. Wetherall 著, 水野 忠則他訳, 日経BP, ISBN-13: 978-4822284763
演習 (20%),中間試験 (40%),期末試験 (40%) により評価する
なし