実験や観測などを通じて得られたデータを解析する手法は,データの種類によっても多種多様な方法論が存在する.その中で,本講義では,時系列で表される実験データやランダム信号に対象を絞って,その解析のための数学的手法について講義する.また実際のデータを用いて講義内容に関する実習を行う.
本講義を通じて,時系列データの変動特性を解析する離散フーリエ変換の手法と,有意なデータに重畳された擾乱・雑音を取り除く各種の手法を身に付けて欲しい.
本講義を履修することによって次の能力を習得する.
1)MATLABを用いた基本的なプログラミングができる
2)時間的に連続して変化する物理量を離散化する適切な間隔を決めることができる
3)時系列データの相関と周波数特性を求めることができる
4)擾乱・雑音が重畳した時系列データから有意なデータを取り出すことができる
確率過程,離散フーリエ変換,標本化定理,ウィナー・ヒンチンの定理,スペクトログラム,雑音,移動平均,フィルタ,特異値分解,特異スペクトル解析
✔ 専門力 | ✔ 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
数学的手法は講義形式で解説を行うとともに適宜演習を実施する.予習を前提として学生に適宜説明を求める場合もある.
実習はIDEラウンジの計算機室でMATLABプログラミングを主として行う.原則として講義と実習を交互に実施する.
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | ガイダンス,信号の表現と扱い(1):標本化定理,フーリエ変換の復習 | 身の回りの信号の例を探す |
第2回 | 信号の表現と扱い(2):確率過程,自己相関,エルゴード性,ウィナー・ヒンチンの定理 | |
第3回 | 実習(1):MATLAB | MATLABを用いた行列計算のプログラミング |
第4回 | 信号の周波数解析(1):離散フーリエ変換 | |
第5回 | 実習(2):離散フーリエ変換 | 正弦波の標本化と離散フーリエ変換 |
第6回 | 信号の周波数解析(2):不確定性原理,窓関数,短時間フーリエ変換 | |
第7回 | 実習(3):短時間フーリエ変換 | チャープ信号のスペクトログラム |
第8回 | 雑音除去(1):白色雑音,移動平均 | |
第9回 | 実習(4):移動平均 | 白色雑音の移動平均 |
第10回 | 雑音除去(2):フィルタ | |
第11回 | 実習(5):フィルタ | フィルタリングによる信号からの雑音除去 |
第12回 | 信号分離(1):特異値分解定理,データの特異値分解 | |
第13回 | 信号分離(2):特異スペクトル解析 | |
第14回 | 実習(6):特異スペクトル解析 | 特異スペクトル解析による信号分離と雑音除去 |
第15回 | 講義のまとめ,最終課題の説明 | 音声データの処理 |
〔教科書〕馬杉正男,信号解析,森北出版,2013.
演習資料はOCW-iにより配布する.
信号の表現と扱い,周波数解析,雑音除去,信号分離,MATLABプログラミングについて,その理解度と応用力を評価する.
配点は,毎回の実習レポート(30点),期末レポート(35点),期末試験(35点).
工学数学A,C,線形システム論を履修していることが望ましい.また工学計測基礎と関係が深いため履修を勧める.
国際開発工学科以外の学生の受講は認めない.