[講義の概要] 本講義では、固体化学の観点から、欠陥を含む結晶構造、絶縁体と金属の電子状態、磁性や電気伝導の原理、半導体デバイスの基本動作原理について解説する。
[講義のねらい] 材料科学と固体化学は、歴史的に固体の様々な性質をそれぞれ物理学と化学の観点から扱ってきた学問といえる。無機化学(材料科学)を履修してきた学生が化学の観点から固体の性質を学ぶことで、原子や分子の化学的性質と固体の物理的性質を関連付けて理解することができる。そして、特定の物理的性質が情報通信や創エネルギー過程における機能に利用されている例を知ることで、原子や分子から有用な材料を創製する能力を養うことができる。本講義では、まず無機化合物の代表的な物性と機能を理解する。続いて、ナノ材料の作製手法やナノ構造特有の性質を理解する。そして、これから無機化学を発展的に学ぶために必要なランタノイドとアクチノイドの化学とイオンの性質を理解する。
本講義を履修することによって、
1) 単純なイオン固体の物性や機能がその物質に固有の結晶構造や電子状態に由来することを元素や化学結合の性質に関する基礎知識を使って説明できる。
2) ナノ材料の作製手法やナノ構造特有の物性・デバイス機能について説明できる。
3) ランタノイドとアクチノイドの化学的性質を説明できる。
4) 情報通信や創エネルギー過程で無機化合物の特定の機能が働く原理について議論できる
欠陥、不定比性、固溶体、遷移金属酸化物、磁性、電気伝導、超伝導体、半導体、複酸化物、ナノテクノロジー、ボトムアップ、トップダウン、量子閉じ込め、超格子、トランジスタ、発光ダイオード、f-ブロック元素、ランタノイド、アクチノイド
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
本講義は、(1)欠陥化学、(2)磁性、(3)電気伝導、(4)ランタノイドとアクチノイド、(5)ナノ材料の順番で進める。そして最終回に、理解度確認のための演習と解説を実施する。第1~11回は大友教授が担当し、第12~14回は一杉教授が担当する。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 固体化学概論 | 講義の目的を説明できる。 |
第2回 | 固体の結晶構造(1) | 結晶構造の種類と記述方法を理解し、種々の結晶構造を 表記できる。 |
第3回 | 固体の結晶構造(2) | イオン固体の構造の分類法を理解し、結合様式や配位数 を求めることができる。 |
第4回 | イオン固体の熱的性質 | イオン固体の結合力や熱的安定性を説明できる。 |
第5回 | 欠陥化学 | 固体中の欠陥の種類と構造を説明できる。 |
第6回 | イオン固体の電子状態 | 単純なイオン固体の物性や機能がその物質に固有の結晶構造や電子状態に由来することを元素や化学結合の性質に関する基礎知識を使って説明できる。 |
第7回 | 電気伝導 | 電気伝導(金属伝導、半導体的伝導、超伝導)の起源と原理について説明できる。 |
第8回 | 酸化還元反応 | エリンガム図を使いながら、環境下における酸化還元反応の特徴について説明できる。 |
第9回 | 磁性と磁気的相互作用 | 磁性の種類と遷移金属酸化物における特徴的なスピン配置や磁気的相互作用について説明できる。 |
第10回 | 固体物性 | 元素の性質に基づき特徴的な強磁性や強誘電性について説明できる。 |
第11回 | ランタノイドとアクチノイドの化学 | ランタノイドとアクチノイドのイオンの性質を説明できる。 |
第12回 | ナノ材料と物性 | ボトムアップ・トップダウン的手法によるナノ材料の合成法について説明できる。 |
第13回 | ナノ構造とデバイス | ナノ構造特有の物性やデバイス機能について説明できる。 |
第14回 | ナノスケール評価技術 | ナノスケールの評価技術の原理と特徴について説明できる。 |
第15回 | 理解度確認のための演習と解説 | 演習により総合的な理解度を高め,到達度を自己評価する。 |
P. Atkins, T. Overton, J. Rourke, M. Weller, F. Armstrong著、田中、平尾、北川 訳「シュライバー・アトキンス無機化学(上・下)」第4版(東京化学同人)ISBN: 978-4-8079-0667-3(上)、978-4-8079-0668-0(下)
R. J. D. Tilley著、滝澤、田中、大友、貝沼 訳「固体材料の科学」(東京化学同人)ISBN: 978-4807908585
他の講義資料は講義中に配布するとともにOCW-iにアップロードする。
期末試験(90%)と演習(10%)で到達目標の達成度を評価する。
履修条件は特に設けないが、関連する科目無機化学(工)第一や他の無機化学の科目群を履修していることが望ましい。但し、本講義を履修する者は、講義内容が重複する無機化学(固体化学)(CAP.A275)と無機化学(材料科学)(CAP.B223-2)は履修できない。
大友 明: aohtomo[at]apc.titech.ac.jp
一杉 太郎: hitosugi.t.aa[at]m.titech.ac.jp