本講義では,主に金属系の機能性材料について定義と分類を説明し,用途別もしくは合金体系別に,種々の機能性材料の性質や用途を解説する.さらに,機能性材料だけでなく機能化させた構造用材料として広く利用される金属間化合物について,その規則構造に固有の格子欠陥の特徴,それらが材料の機能特性に及ぼす影響について説明する.
我々の生活や産業,科学技術を担う材料は,構造用材料と機能性材料の二つに大別できる.産業や技術が高度化するにつれ,様々な機能性材料の必要性は高まっており,用途の変化に応じて機能性材料は多様化している.この講義では,種々の金属系機能性材料の性質や役割を理解し,機能性材料を設計,開発,製造,応用するために必要な知識と技術を習得する.
本講義を履修することによって次の能力を修得する。
1)材料の機能と特性は結晶構造,格子欠陥,相界面,組織を起源として発現することの説明ができる.
2)二元系合金の相互作用係数を導出して,理想溶体,相分離,規則相の形成傾向を説明でき,規則化に伴う逆位相境界形成と規則度評価法の説明ができる.
3)金属間化合物の相安定性を化学量論組成に関する状態図の特徴として説明でき,非化学量論組成において規則構造に導入される点欠陥の種類と特徴を説明できる.
4)規則構造に導入される超転位の特徴をランダム固溶体の転位と比較して説明できる.
5)磁性材料を磁化曲線で軟質磁性材料と硬質磁性材料に分類できる.
6)エネルギー変換材料としての耐熱合金,太陽電池,燃料電池,熱電材料について基礎的な材料設計と利用法を説明できる.
7)現在開発されている銅合金の特徴と用途を説明できる.
8)機能性チタン合金の特徴と用途を説明できる.
9)形状記憶効果と超弾性特性について理解し,状記憶合金と超弾性合金の特徴と用途を説明できる.
10)生体用金属材料の分類と特徴について説明できる.
金属間化合物,規則構造,超格子転位,磁性材料,エネルギー変換材料,耐熱合金,熱電材料,組織制御,導電性材料,形状記憶合金,超弾性合金,生体金属材料
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
毎回の講義において演習課題を配布し,内容の説明を進めるなかで理解度の確認と向上を目的としてグループディスカッションをしてもらいます。講義全体を前後半に分けて,それぞれの小括として理解度確認テストを実施し,復習と補足を行います.各回の授業内容をよく読み,講義の予習と復習を行って下さい.
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 機能性材料の定義と分類 | 機能性材料と構造用材料に大別するための定義の説明,材料の機能と特性は結晶構造,格子欠陥,相界面,組織を起源として発現することの説明ができる. |
第2回 | 合金の相安定性と機能性 | 二元系合金の相互作用係数を導出して,理想溶体,相分離,規則相の形成傾向を説明できる.規則化における逆位相境界,短範囲および長範囲規則度の考え方を説明できる. |
第3回 | 金属間化合物の規則結晶構造と機能性 (1) | 金属間化合物の相安定性を化学量論組成と融点に関する状態図の特徴として説明できる.非化学量論組成において規則構造に導入される点欠陥の種類と特徴を説明できる. |
第4回 | 金属間化合物の規則結晶構造と機能性 (2) | 金属間化合物の規則構造に導入される超格子転位について,バーガースベクトル,逆位相境界と分解様式,塑性変形挙動の特徴をランダム固溶体の場合と比較して説明できる. |
第5回 | 金属間化合物の規則結晶構造と機能性 (3) | 実用の金属間化合物であるNi基超合金について,規則構造,組織制御,製造プロセス,耐熱コーティングそれぞれに関する機能付与の原理と役割を説明できる. |
第6回 | 磁性材料と組織制御 | 磁化曲線のヒステリシスに基づいて軟質磁性材料と硬質磁性材料の特徴ならびに利用対象を説明できる.磁区と組織の制御法,磁気異方性の分類について概要を説明できる. |
第7回 | エネルギー変換材料の利用 | エネルギー変換材料として太陽電池,燃料電池,熱電材料の基本原理,特徴,課題を学び,どのように省エネルギーと環境保全のために活用すべきか意見を述べることができる. |
第8回 | 理解度確認,復習,補足 | 前半(第1回から第7回)のトピックスに関する理解が不十分なところを復習,補足し,理解度確認テストを実施する. |
第9回 | 銅合金と導電性材料① | 銅合金の歴史と分類について理解し主な銅合金の用途と特徴 について説明できる. |
第10回 | 銅合金と導電性材料② | 時効硬化型銅合金の分類を特徴を理解し,現在行われている合金開発について説明できる. |
第11回 | 機能性チタン合金 | 機能性チタン合金について特徴と用途を説明できる. |
第12回 | 形状記憶合金と超弾性合金 | 形状記憶効果と超弾性特性について理解し,状記憶合金と超弾性合金の特徴と用途を説明できる. |
第13回 | 生体用金属材料① | 生体用金属材料の分類と特徴について説明できる. |
第14回 | 生体用金属材料② | 先端医療向けの生体用金属材料の分類と特徴について説明できる. |
第15回 | アモルファスとバルク金属ガラス | アモルファスやバルク金属ガラスについて説明できる. |
配布プリント
講義において紹介する.
金属間化合物の規則構造に特有の格子欠陥,磁性材料,エネルギー変換材料,銅合金と導電性材料,機能性チタン合金,形状記憶と超弾性合金,生体用金属材料の機能設計に関する基礎事項について理解度を評価する.講義中の課題演習もしくはレポート(前後半各25点),理解度確認テスト(25点)および期末試験(25点)で理解度および達成度を評価し,講義の前後半それぞれ50点満点,合計で100点満点とする.
特に定めない.
小林郁夫 kobayashi.e.ad[at]m.titech.ac.jp, 03-5734-3147
木村好里 kimura.y.ac[at]m.titech.ac.jp, 045-924-5157
講義開始時に特定の時間を告知する予定ですが,基本的にメールまたは電話等で教員の都合を問い合わせてください.