本講義の主要なテーマは,最適輸送理論と曲率の下限の関係である.ここで最適輸送理論とはその名の通り,物質を最適に輸送する方法を考える理論である.輸送の最適性をエネルギーの最小性で定義すると,最適輸送経路は最短線となる.そして最短線の挙動を注意深く考察すると,空間の曲がり具合がわかる.また,本講義で扱う曲率はリッチ曲率のことであり,リッチ曲率の下限は距離球体の体積を制御することが知られている.
本講義では,まず,最適輸送問題をどのように確率測度空間上の変分問題として定式化するかを学ぶ.その後,多様体およびリーマン多様体の概観し,リッチ曲率が最適輸送理論を介してどのように現れるかを理解することを狙いとする.
・最適輸送問題の数学的定式化を述べられるようになること
・輸送計画の最適性を判定できるようになること
・リーマン多様体の基本的な性質を理解すること
・リッチ曲率が正の空間の例が挙げられるようになること
・最適輸送理論とリッチ曲率の関係を理解すること.
最適輸送理論、変分問題、距離空間、完備、可分、測地性、測度距離空間、リーマン多様体、リッチ曲率、ヤコビ場、エントロピー、凸性、ブルン・ミンコフスキー不等式
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
通常の講義形式で行う.また,適宜レポート課題を出す.
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 以下の内容を順に解説する予定である. ・有限集合上の最適輸送理論 ・ユークリッド空間上の最適輸送理論 ・多様体 ・リーマン多様体 ・曲率 ・リーマン距離関数 ・リーマン体積測度 ・ヤコビ場 ・エントロピー ・曲率次元条件 ・ブルン・ミンコフスキー不等式 | 講義中に指示する. |
使用しない.
「数学メモアール第8巻 最適輸送理論とリッチ曲率」桑江一洋; 塩谷隆; 太田慎一; 高津飛鳥; 桒田和正共著 日本数学会(2017年) 「Optimal Transport: Old and New」Cédic Villani著 Springer (2008年)
レポート課題(100%)による.
なし