2021年度 数学特殊講義H   Special courses on advanced topics in Mathematics H

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開講元
数学科
担当教員名
三枝 洋一  田口 雄一郎 
授業形態
講義     
メディア利用科目
曜日・時限(講義室)
集中講義等   
クラス
-
科目コード
ZUA.E342
単位数
2
開講年度
2021年度
開講クォーター
3Q
シラバス更新日
2021年3月19日
講義資料更新日
-
使用言語
日本語
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講義の概要とねらい

本講義では,大域ラングランズ対応についての解説を行う.大域ラングランズ対応とは,整数係数方程式の各素数pにおけるmod pでの解の個数という代数的な対象と,保型形式という解析的な対象の間に関係があるであろうという,一般には未解決な予想である.楕円曲線と保型形式の間に対応があるという志村・谷山予想はフェルマー予想を解決する鍵となったが,それは大域ラングランズ対応の一部と見ることができる.この講義の前半では,まず様々な例を通して大域ラングランズ対応がどのような現象なのかを把握した後,ガロア表現と保型表現を用いた,現代的な大域ラングランズ対応の定式化を解説する.その後は,ガロア表現に保型表現を対応させる問題(ガロア表現の保型性問題)に話を絞る.フェルマー予想を解決するために開発されたTaylor-Wiles法を概観した後,最近の進展である,虚二次体上のガロア表現の保型性問題に関するCalegari-Geraghty法の紹介を行う.
大域ラングランズ対応は,数論における様々な問題と結び付いている,非常に興味深い研究課題である.本講義の前半では,その現象自体の面白さを伝えるとともに,大域ラングランズ対応の正確な定式化を正確に理解するためには,ガロア表現や保型表現という表現論的な概念が重要であることを強調したい.ガロア表現の保型性問題を扱う後半部では,フェルマー予想がどのようなアイデアに基づいて解決されたかを把握していただくとともに,そのアイデアが近年どのように発展しているかを概観していただけたらと思う.

到達目標

・様々な例を通して,有理数体上のGL(2)の大域ラングランズ対応がどのような現象なのかを把握する.
・ガロア表現と保型表現を用いた,GL(n)の大域ラングランズ対応の定式化を理解する.
・保型性持ち上げ定理の主張を理解する.
・Taylor-Wilesによる保型性持ち上げ定理の証明方法を理解する.
・虚二次体上の場合にTaylor-Wilesの手法がうまくいかない理由を把握し,その困難を克服するCalegari-Geraghtyの方法を理解する.

キーワード

ラングランズ対応,保型表現,ガロア表現,エタールコホモロジー,普遍変形環,局所対称空間,Taylor-Wiles法,Calegari-Geraghty法

学生が身につける力(ディグリー・ポリシー)

専門力 教養力 コミュニケーション力 展開力(探究力又は設定力) 展開力(実践力又は解決力)

授業の進め方

通常の講義形式で行う.

授業計画・課題

  授業計画 課題
第1回 以下の内容を順に解説する予定である. ・大域ラングランズ対応の例 ・ガロア表現とエタールコホモロジー ・保型表現 ・大域ラングランズ対応の定式化 ・保型性持ち上げ定理の主張 ・ガロア表現の変形と普遍変形環 ・局所対称空間とヘッケ環 ・有理数体上の保型性持ち上げ定理:Taylor-Wilesの方法 ・虚二次体上の保型性持ち上げ定理:Calegari-Geraghtyの方法 講義中に指示する.

教科書

使用しない.

参考書、講義資料等

講義中に指示する.

成績評価の基準及び方法

レポート課題(100%)による.

関連する科目

  • MTH.A401 : 代数学特論A
  • MTH.A402 : 代数学特論B
  • MTH.A501 : 代数学特論E
  • MTH.A502 : 代数学特論F

履修の条件(知識・技能・履修済科目等)

代数学における基本事項を修得していることが望ましい.

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