本講義の主要なテーマは,流体力学の基礎方程式として知られるNavier-Stokes方程式の定常解の安定性解析である.Navier-Stokes方程式は19世紀中頃に非圧縮性粘性流体の運動を記述する方程式として提唱された非線形偏微分方程式系であり,非線形系であることと非局所性からその厳密な解析は難しい場合が多く,今なお未解決の問題が多く残されている.本講義では,非有界領域におけるNavier-Stokes方程式のあるクラスの定常解の存在と安定性について近年の進展を含めて解説する.
Navier-Stokes方程式を題材に,非線形偏微分方程式の解の存在や安定性に対する一つの典型的な解析手法について学ぶことを目的とする.また,線形性と非線形性の釣り合うスケール臨界性に着目しつつ,流体力学的な直観と数学的な構造がどのように対応するのかについても理解できるよう配慮し,実解析や関数解析がどのように役立っているか学ぶ.
・Navier-Stokes方程式の定常解の存在と安定性について,線形化作用素の解析に基づいた標準的な議論を理解すること.
・Navier-Stokes方程式のスケール不変性と解の挙動の関係について理解すること.
・回転物体周りの流れの数学的構造について理解すること.
・軸対称旋回流の持つ特徴的な数学的性質について理解すること.
Navier-Stokes方程式,渦度場,線形作用素のスペクトルとレゾルベント,定常解の存在と安定性,スケール不変性と解の漸近挙動,軸対称旋回流
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
通常の講義形式で行う.また,適宜レポート課題を出す.
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | Navier-Stokes方程式に関する用語の定義等について | 講義中に指示する. |
第2回 | 様々な厳密定常解(1) | |
第3回 | 様々な厳密定常解(2) | |
第4回 | 2次元回転物体の周りを流れる時間周期的Navier-Stokes流の存在(1) | |
第5回 | 2次元回転物体の周りを流れる時間周期的Navier-Stokes流の存在(2) | |
第6回 | 2次元回転物体の周りを流れる時間周期的Navier-Stokes流の存在(3) | |
第7回 | 2次元単位円の外部領域における厳密定常解の安定性(1) | |
第8回 | 2次元単位円の外部領域における厳密定常解の安定性(2) | |
第9回 | 2次元単位円の外部領域における厳密定常解の安定性(3) | |
第10回 | 2次元外部領域におけるスケール臨界流の安定性(1) | |
第11回 | 2次元外部領域におけるスケール臨界流の安定性(2) | |
第12回 | Burgers渦の安定性:導入 | |
第13回 | Burgers渦の2次元安定性 | |
第14回 | Burgers渦の3次元安定性(1) | |
第15回 | Burgers渦の3次元安定性(2) |
使用しない
「ナヴィエ-ストークス方程式の数理」 岡本久 著 (東京大学出版, 2009年); 「Nonlinear partial differential equations. Asymptotic behavior of solutions and self-similar solutions. Progress in Nonlinear Differential Equations and their Applications, 79」 M.-H. Giga, Y. Giga, and J. Saal (Birkh{\"a}user, Boston, 2010)
レポート課題(100%)による.
特になし