本講義の主要なテーマは、シンプレクティック商という、シンプレクティック幾何における商空間の幾何である。シンプレクティック多様体や群作用などの基本事項から始めて、モーメント写像やシンプレクティック商を解説する。次に、シンプレクティック商の重要な例であるトーリック多様体について解説する。さらに、シンプレクティック商と、GIT商と呼ばれる代数幾何における商空間との関係を解説する。最後に、シンプレクティック商のハイパーケーラー幾何における類似物であるハイパーケーラー商について解説する。
さまざまな微分幾何的対象のモジュライ空間はシンプレクティック商やハイパーケーラー商として、一方、代数幾何的対象のモジュライ空間はGIT商として構成される。多くの場合、シンプレクティック商は、GIT商と自然に同一視される。このことは,正則ベクトル束や,複素多様体の標準計量の存在問題などにおいて多くの指導原理を与えてきた。また,これらの商空間は,幾何的手法と代数的手法の両方を用いて,さまざまな性質が調べられる。本講義の目的は、このような商空間の幾何を解説することである。
・シンプレクティック多様体、群作用などの基本的な性質を理解すること
・モーメント写像、シンプレクティック商などの基本的な性質を理解すること
・シンプレクティックトーリック多様体の具体例を扱えるようになること
・シンプレクティック商とGIT商の関係を理解すること
・ハイパーケーラー商の具体例を扱えるようになること
シンプレクティック多様体,モーメント写像,シンプレクティック商,トーリック多様体,前量子直線束,GIT商,ハイパーケーラー商,トーリックハイパーケーラー多様体
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
通常の講義形式で行う.また,適宜レポート課題を出す.
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | シンプレクティック多様体 | 講義中に指示する. |
第2回 | リー群の作用 | |
第3回 | 物理的背景 | |
第4回 | モーメント写像 | |
第5回 | シンプレクティック商 | |
第6回 | シンプレクティック商の例 | |
第7回 | シンプレクティックトーリック多様体 | |
第8回 | 複素多様体としてのトーリック多様体 | |
第9回 | トーリック多様体の性質 | |
第10回 | 前量子直線束とモーメント写像 | |
第11回 | 代数幾何における商空間(GIT商) | |
第12回 | シンプレクテック商とGIT商の関係 | |
第13回 | ハイパーケーラー商 | |
第14回 | トーリックハイパーケーラー多様体 | |
第15回 | ハイパーケーラー商の性質 |
使用しない
今野宏「微分幾何学」東京大学出版会(2013)
植田一石「数物系のための シンプレクティック幾何学入門」サイエンス社SGCライブラリ118(2015)
レポート課題(100%)による.
多様体論,コホモロジー論,リー群論