本講義の主要なテーマは、量子コホモロジー環の理論である。本講義では、安定写像のモジュライ空間から始めて、Gromov-Witten 不変量の構成の概要を整理し、その基本的な性質を紹介する。さらに、J-関数を通じて量子コホモロジー環の構造と可積分系の関係を論じる。また、時間があれば、量子 K-理論等の話題についても触れる。
20 世紀末の素粒子論における位相的場の理論の発展は、古典的な数え上げ代数幾何学への新しいアプローチをもたらし、それは現在では Gromov-Witten 理論あるいは量子コホモロジー理論として知られている。量子コホモロジー環の理論は、主にミラー対称性の解明に必要な概念として 90 年代前半に完成され、その後も場の理論の幾何学において重要な役割を果たしている。本講義では、J-関数を通じて量子コホモロジー環の構造と可積分系の関係を論じる。特に、量子コホモロジー環の具体例として旗多様体の量子コホモロジー環を取り上げ、その戸田系との関係について理解する事が本講義の主な目標である。
本講義を履修する事により、以下の知識と能力を習得する。
・Gromov-Witten 不変量の構成について理解する。
・量子コホモロジー環の構成について理解する。
・量子コホモロジー環の具体例を知る。
モジュライ空間、交叉理論、量子コホモロジー環、旗多様体
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
通常の講義形式による講義を行う。また、適宜、レポート問題を出す。
授業計画 | 課題 | |
---|---|---|
第1回 | 安定写像のモジュライ空間 I | 講義中に指示する。 |
第2回 | 安定写像のモジュライ空間 II | |
第3回 | Moduli space of stable maps III | |
第4回 | Gromov-Witten 不変量 I | |
第5回 | Gromov-Witten 不変量 II | |
第6回 | Gromov-Witten 不変量 III | |
第7回 | WDVV 方程式と量子コホモロジー環 I | |
第8回 | WDVV 方程式と量子コホモロジー環 II | |
第9回 | WDVV 方程式と量子コホモロジー環 III | |
第10回 | J-関数 I | |
第11回 | J-関数 II | |
第12回 | J-関数 III | |
第13回 | 旗多様体の量子コホモロジー環 I | |
第14回 | 旗多様体の量子コホモロジー環 II | |
第15回 | 旗多様体の量子コホモロジー環 III |
使用しない
講義資料は、講義中に配布する。
レポート課題 (100%) による。
履修の条件は特に設けないが、関連する科目を履修している事が望ましい。