2022年度 応用解析序論第一   Applied Analysis I

文字サイズ 

アップデートお知らせメールへ登録 お気に入り講義リストに追加
開講元
数学系
担当教員名
小池 開 
授業形態
講義    (対面型)
メディア利用科目
曜日・時限(講義室)
水3-4(H112)  
クラス
-
科目コード
MTH.C211
単位数
1
開講年度
2022年度
開講クォーター
3Q
シラバス更新日
2022年4月20日
講義資料更新日
-
使用言語
日本語
アクセスランキング
media

講義の概要とねらい

 本講義とそれに続く『応用解析序論第二』(4Q)では,現代数学の諸概念と密接な関わりを持ち,また諸科学への応用上も重要な「フーリエ解析」について学ぶ.前半(3Q)の本講義では,とくにフーリエ級数の理論を扱う.
 本講義の第一のねらいは,フーリエ級数に関する基礎事項を理解してもらうことにある.とくに「フーリエ級数はいつ,どのような意味で収束するか」というフーリエ級数の収束問題について,数学的に厳密な議論ができるようになることを目指す.第二のねらいは,フーリエ級数の典型的な応用について理解してもらうことである.フーリエ級数の応用範囲は極めて広いが,本講義ではとくに微分方程式への応用を重点的に取り上げる(他にも確率論,解析数論,信号・画像処理等,様々な応用がある).第三の重要ではあるがやや間接的なねらいは,フーリエ級数の理論を通し,現代解析学の諸概念をよりよく理解してもらうことにある.例えば,『解析概論第一・第二』で学ぶ極限に関する厳密な理論は,フーリエ級数の収束問題を論じる上で欠かせないものである.また,続編の『応用解析序論第二』で学ぶことになる,関数の集まりを空間とみなす考え方は,『函数解析』で学ぶ理論への第一歩でもある.

到達目標

1)フーリエ級数の定義を述べることができ,基本的な関数のフーリエ級数を計算できるようになること.
2)フーリエ級数に関するディリクレの収束定理が証明でき,具体例に応用できるようになること.また,フーリエ級数の収束に関連した重要な例が挙げられるようになること.
3)フーリエ級数の応用として,いくつかの線形偏微分方程式の解を三角級数として表せるようになること.また,それに関連した数学的論証が行えるようになること.

キーワード

フーリエ級数,関数項級数,各点収束・一様収束,ギッブス現象,ディリクレ核,ディリクレの収束定理,熱・波動方程式

学生が身につける力(ディグリー・ポリシー)

専門力 教養力 コミュニケーション力 展開力(探究力又は設定力) 展開力(実践力又は解決力)

授業の進め方

毎回講義プリントを配布し,それにもとづいて授業を進める.また,講義内容の理解を確認するため,毎回提出課題を与える.

授業計画・課題

  授業計画 課題
第1回 偏微分方程式の解法と関数の三角級数展開 変数分離法と重ね合わせの原理を用い,基本的な線形偏微分方程式の解を三角級数として表せるようになること(この段階では数学的に厳密な議論ができることは要求しない).参考書 [2] の第1章に相当する内容を予習しておくとよい.
第2回 複素数値関数,関数項級数の収束 複素数値関数(とくに複素指数関数)の微積分に関する計算ができるようになること.また,イプシロン・デルタ論法を用い,関数項級数の各点収束・一様収束の定義が述べられるようになること.加えて,関連する例や反例が挙げられること.『解析学概論第一・第二』のイプシロン・デルタ論法に関する箇所を復習しておくとよい.
第3回 フーリエ級数の具体例 簡単な関数のフーリエ係数が計算できるようになること.関数の定積分に関する基本的な技法(例えば置換積分や部分積分)について復習しておくとよい.
第4回 フーリエ級数の収束定理(1) フーリエ級数の収束に関するディリクレの定理を証明することができ,具体例に適用できるようになること.また,フーリエ級数の収束に関連する重要な例が挙げられるようになること.
第5回 フーリエ級数の収束定理(2) 講義中に指示する.
第6回 フーリエ級数の応用(1) 第1回で扱った偏微分方程式の解法を数学的に厳密に論証できるようになること.
第7回 フーリエ級数の応用(2) 講義中に指示する.

授業時間外学修(予習・復習等)

本講義シラバスを参考にして,各回の前後に予習・復習をそれぞれ概ね100分以上行うこと(提出課題への取り組みも含む).予習・復習の題材については必要に応じ,講義プリント等にてより具体的に指示する.

教科書

特になし

参考書、講義資料等

[1] 高橋陽一郎『実関数とフーリエ解析』岩波書店(2006年):本講義(第3Q)と関係する箇所は主に第1−3章である.§1.1−1.3 には予備知識がまとまっており,基礎知識の確認に役立つ.また,第2章の内容は本講義のそれと共通する部分が多く,講義の予習や詳しい証明の確認などに適している.第3章にはフーリエ級数の応用が数多く述べられおり,講義内容への興味をさらに深める素材として活用することができる.
[2] エリアス・M. スタイン,ラミ・シャカルチ『フーリエ解析入門』(訳者:新井仁之,杉本充,高木啓行,千原浩之)日本評論社(2007年):フーリエ解析に関する世界的に定評のある教科書である.本講義(第3Q)と関係する箇所は主に第1−4章.上記の参考書 [1] に比べ,問題背景や動機に関する説明が丁寧に述べられている.また,問題が豊富であり,問題集としても役立つ.

成績評価の基準及び方法

各回の講義内容の理解を毎回の提出課題で評価する.また,上記「到達目標」の達成度を期末試験により評価する.なお,「到達目標」で述べたことよりやや高度な内容の理解も多少問うことになる(詳細は講義内で述べる).
配分は提出課題(30%),期末試験(70%)とする.

関連する科目

  • MTH.C201 : 解析学概論第一
  • MTH.C202 : 解析学概論第二
  • MTH.C212 : 応用解析序論第二
  • MTH.C351 : 函数解析
  • MTH.C305 : 実解析第一
  • MTH.C306 : 実解析第二
  • MTH.C301 : 複素解析第一
  • MTH.C302 : 複素解析第二

履修の条件(知識・技能・履修済科目等)

『微分積分学第一・演習』,『微分積分学第二』,『微分積分学演習第二』,『解析学概論第一』,『解析学概論第二』の内容を習得していることが望ましい.

このページのトップへ