地球は複雑な多成分系であるが、個々のパーツは極めて基本的な物理法則・化学法則の積み重ねにより構築されている。例えば岩石や鉱物の形成はマグマの熱力学に支配されており、温度・圧力・化学組成の関数として記述可能である。本講義は基礎編と応用編から成り、前半(第1回~第7回)では、熱力学を学習する上で必要となる基礎法則および熱力学関数について講義する。後半(第8回~第15回)では水溶液・岩石・鉱物の熱力学的な取り扱いに必要なギブスエネルギー、相律などの概念を中心に講義と演習を行う。
基礎編では熱力学を支配する第一法則・第二法則、並びに種々の熱力学関数を正しく理解し、それらを用いた演習問題が解答できるようにすることを目標とする。応用編ではギブスエネルギーや相律を正しく理解し、水溶液の化学・岩石の化学等、実用に則した熱力学の知識を身につける。
状態方程式、熱力学第一法則、第二法則、自由エネルギー、相律、水溶液、固溶体、鉱物共生
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
各回の授業内容をよく読み、配付資料や参考書を用いて予習・復習を行うこと。
授業計画 | 課題 | |
---|---|---|
第1回 | 気体分子運動論 | 気体の運動エネルギーと温度の関係を知る。 |
第2回 | 気体の状態方程式 | 理想気体と実在気体の状態方程式を理解する。 |
第3回 | 熱力学第一法則 | 仕事、熱、エネルギーの関係を知る。また、エンタルピーとは何か、理解する。 |
第4回 | 熱力学第二法則 | カルノーサイクル、クラウジウスの不等式などを理解する。 |
第5回 | エントロピー | エントロピーの熱力学的な定義を理解する。 |
第6回 | 自由エネルギー | ヘルムホルツエネルギー、ギブズエネルギーと化学変化の自発性を理解する。 |
第7回 | 基礎編演習 | 熱力学第一法則、第二法則に関する演習問題を解く。 |
第8回 | 水溶液の化学 | ギブスエネルギーと濃度の関係を理解する。 |
第9回 | 分配 | 平衡定数について理解する。 |
第10回 | 熱力学データの取り扱い | ギブスエネルギーの算出法を学ぶ。 |
第11回 | 応用編演習1 | pH-Eh図の書き方を学ぶ。 |
第12回 | 相律 | ギブスの相律を導出し、物質の相関係を理解する。 |
第13回 | 岩石構成成分の熱力学的取り扱い | 多成分系の岩石の相関係を理解する |
第14回 | 岩石ー水相互作用 | 岩石と水の相互作用を熱力学的に記述する。 |
第15回 | 応用編演習2 | 他成分系の岩石の相関係に関する問題を解く |
講義中に資料を配付する
P.W. Atkins 著 『アトキンス物理化学(上)』(第8版) 東京化学同人
内田 悦生 著 『岩石・鉱物のための熱力学』 共立出版
松尾 禎士 著 『地球化学』 講談社
水・岩石・鉱物に関わる熱力学についての理解度を評価する。演習(35%)および期末試験(65%)で成績を評価する。
履修の条件を設けない