物理化学の基礎としての量子化学を概説し、原子・分子から分子集合系に至るまでの量子論に基づく物質観を身に着ける基盤を提供する。物質の物理化学的性質の基本である同種粒子の不可弁別性の原理とそれから導出されるパウリの原理を理解する。同時に、多数の分子、原子、電子で構成される固体の、電気的、光学的、熱的基礎特性を理解するために、エネルギーバンド構造、フォノンとその統計的取り扱いを解説する。それらに基づいて、分子固体の示す金属性、半導体特性の理解を目指す。
物理化学の基礎としての量子化学を修得し、原子・分子から分子集合系に至るまでの量子論に基づく物質観を身につける。具体的な項目は以下の通り:同種粒子の不可弁別性の原理とパウリの原理、分子のエネルギー構造と対応する分光学 (回転準位、振動準位、電子準位、スピン)、分子集合系のエネルギー状態(エネルギーバンド構造の基礎概念)と、それに基づく分子集合系の電子的・光学的性質、金属性と半導体特性の理解。
同種粒子の不可弁別性の原理、パウリの原理、
分子構造、分子分光学、分子分配関数、エネルギーバンド構造、光学特性、状態密度、フェルミエネルギー
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
月曜日には、パウリの原理にかかわる講義を、木曜日には固体物理にかかわる講義を行う。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 講義全体の説明、凝縮系物質の電子状態の基礎 | 分子固体物質の電子状態の特徴は何か? |
第2回 | パウリの原理再考(2粒子系) | 2粒子系について、同種粒子の不可弁別性の原理から同種粒子の交換対称性を導出できるようになる。 |
第3回 | 分子性凝縮系物質の電子状態 :エネルギーバンド構造を中心に | バンドモデルはどこまで固体を解き明かしたか? |
第4回 | 数学的背景:n文字の置換 | n文字の置換を説明できるようになる。 |
第5回 | 凝縮系物質の励起状態の物理化学的描像1 :励起子とはなんだろう? | 固体の光学的特性をバンドモデルで理解可能か? |
第6回 | パウリの原理再考(n粒子系) | n粒子系について、同種粒子の不可弁別性の原理から同種粒子の交換対称性を導出できるようになる。 |
第7回 | 凝縮系物質の励起状態の物理化学的描像2 :電荷を運ぶものはなにか? | 固体の光学的特性をバンドモデルの修正 |
第8回 | ボゾンとフェルミオン | 量子的粒子がボゾンとフェルミオンに分類できることを理解できるようになる。 |
第9回 | 同種のボゾンn個からなる系の性質 | 同種のボゾンn個からなる系の性質を理解できるようになる。 |
第10回 | 分子性固体の熱的物性に影響を与える固体の格子振動1 フォノンとは何か?その性質は? | 固体結晶中の原子の力学に基づいてフォノンの基礎概念を理解する。 |
第11回 | 同種のフェルミオンn個からなる系の性質 | 同種のフェルミオンn個からなる系の性質を理解できるようになる。 |
第12回 | 分子性固体の熱的物性に影響を与える固体の格子振動2 | 固体結晶中の原子の力学に基づいてフォノンの特徴的ふるまいを理解する |
第13回 | パウリの原理およびパウリの排他原理の証明 | パウリの原理とパウリの排他原理を証明できるようになる。 |
第14回 | 分子性固体の熱的、電気的性質とフォノンとの関係 | 固体結晶中の比熱や熱伝導度におけるフォノンの役割を理解する。 |
必要に応じて資料を配布する。
特にない。
原子・分子・分子集合系の量子力学に関わる基本的事項の理解の程度により評価する。
授業における演習等が10%、期末試験が90%の割合である。
量子化学の初歩的知識
腰原伸也 skoshi[at]cms.titech.ac.jp
河内宣之 nkouchi[at]chem.titech.ac.jp
メールで予約すること。
腰原伸也 (本館H132A号室)
河内宣之 (西4号館508号室)