非平衡熱力学は,近年機械工学分野において益々重要になってきている.これは,燃料電池・二次電池・熱電変換技術・プラズマ技術などの先端技術における輸送現象に対して有用な理論的取り扱いの枠組みを与える学問である.具体的に,非平衡熱力学は,同じ空間で同時に生じる,異なる駆動力に由来する複数の輸送過程(熱・物質・電荷輸送など)とそれらの間の相互作用を体系的に取り扱うのに必要な,一連の方程式を提供する.
本講義は,まず基礎的な工学的問題を例に用いながら理論と方程式系の導入を行い,続いて具体的な工学的問題への応用を示し,受講者に本授業内容を効果的に学修させることを狙いとしている.
本講義内容を学修することにより,非平衡熱力学の概念と理論を理解し,それが幅広い工学の輸送問題の取り扱いに有用であることを認識し,かつそれを具体的な工学的問題に使用・応用できる能力を身に付けること.
輸送現象,電池,熱電効果,ソレー効果,熱力学,プラズマ現象
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
✔ 機械工学分野・エネルギー工学領域に関する高度な専門知識. |
R3年度はオンライン(Zoom)で行われる.
授業中は必ず講義ノートをとること.授業内容の理解を深めるため,毎回の授業後に復習を行うことを強く推奨する.
講義回より,事前にOCW-iを通じて補助資料を配布する.授業中の読みやすさのため,この資料は可能な限り事前に紙で印刷しておいて授業に臨むこと.
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 非平衡熱力学の概要と基本概念 | 非平衡熱力学の基本概念を学び,その内容を説明できるようになること. |
第2回 | エントロピー生成,散逸関数,熱・物質・電荷の輸送,流束方程式 | エントロピー生成,散逸関数,熱・物質・電荷の輸送,流速方程式について学び,その内容を説明できるようになること. |
第3回 | 流束方程式(つづき),現象論的係数,オンサーガーの相反定理 | 流束方程式,現象論的係数,オンサーガーの相反定理について学び,その内容を説明できるようになること. |
第4回 | 流束方程式の適用(1): 濃淡電池における輸送過程 流束方程式の適用(2): 温度勾配のある系の輸送過程 | 流束方程式の適用例として濃淡電池における輸送過程および温度勾配のある系の輸送過程について学び,その内容を説明できるようになること. |
第5回 | 流束方程式の適用(2): 温度勾配のある系の輸送過程(つづき) | 流束方程式の適用例として温度勾配のある系の輸送過程について学び,その内容を説明できるようになること. |
第6回 | 流束方程式の適用(3): イオン交換膜内の輸送過程のイントロダクション 応用(1):プラズマの生成過程とエネルギー輸送 | イオン交換膜内の輸送過程のイントロダクションについて学び,その内容を説明できるようになること. 非平衡系の熱力学の関連する発展内容としてプラズマの生成過程とエネルギー輸送について学び,その内容を説明できるようになること. |
第7回 | 応用(2): 非平衡プラズマの応用 | 非平衡系の熱力学の関連する発展内容として非平衡プラズマの応用について学び,その内容を説明できるようになること. |
学修効果を上げるため,各回の授業後に,板書ノートや配布資料等を使い,概ね100分を目安に復習を行うこと.
K. S. Forland, T. Forland, S. K. Ratkje, "Irreversible Thermodynamics: Theory and Applications" John Wiley & Sons
K. S. Forland, T. Forland, S. K. Ratkje 著,伊藤靖彦 監訳,『わかりやすい非平衡熱力学』 オーム社
S. Wisniewski, B. Staniszewski, R. Szymanic, "Thermodynamics of nonequilibrium processes", PWN-Polish Scientific.
S. R. de Groot, P. Mazur, "Non-equillibrium thermodynamics", North-Holland Publishing Co. or Dover Publications.
本科目の内容の理解度を確かめる試験問題を答案用紙とともに与え,各自答案を筆記記入し,期限までにPDFファイルにスキャンしてOCWに提出する方式を予定している(詳細は別途アナウンス).【注意】答案について他人と相談すること,自分の答えを他人に伝えること,他人の答えを見ることは厳禁であり,必ず各人の独力で解答すること.
なお,正しい答えやその導き方は全て授業内容と配布資料の中にある.インターネット検索で得られる情報は出題の意図や想定とは大きく異なっていることが多く,そのような情報には頼らず,本授業内容の学修を通じて得た知識に基づいて解答すること.
大学院生の履修について:
特になし.
学部生の履修について:
本科目は大学院レベルの内容であり,自らの卒論研究に深く関連する場合を除いて履修は許可しない.このような特段の理由があり,学部生で履修を希望する場合は,科目担当教員との面談で理由を聴取した上,履修を許可するものとする.
上記の「授業計画」と「回」との対応は授業の進行状況によって異なる場合があるが,内容は基本的にこの順番で進められる.