2021年度 無機化学第一   Inorganic Chemistry I

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開講元
化学系
担当教員名
前田 和彦 
授業形態
講義     
メディア利用科目
曜日・時限(講義室)
月3-4(W935)  木3-4(W935)  
クラス
-
科目コード
CHM.B201
単位数
2
開講年度
2021年度
開講クォーター
2Q
シラバス更新日
2021年3月19日
講義資料更新日
-
使用言語
日本語
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講義の概要とねらい

 無機化学とは、周期律表の元素全部を対象とする極めて幅広い学問分野である。本講義では、原子や分子の電子構造に着目して、各元素とその化合物の性質と特徴(化学結合、物性、反応性など)の違いを論理的かつ包括的に理解することを目指す。はじめに、元素の性質を決定付ける原子の中の電子の振る舞いについて解説し、イオン化エネルギー、電子親和力、電気陰性度などのパラメータを周期律表に基づいて整理する。結合論では、原子価結合法、VSEPR則に基づいた共有結合の表現方法を解説し、共有結合の表現方法として分子軌道法の基礎も扱う。無機固体のテーマでは、固体の結晶構造、バンド理論、光吸収、熱力学を解説する。酸塩基では、酸強度の支配因子を電子配置と分子軌道の観点から理解することを目指す。酸化・還元では、化学電池の基本原理と関連する基礎的事項を熱力学的観点から習得することを目指す。
 本講義の狙いは、無機化学の基礎知識を身につけることで、後続科目においてより高度な専門教育を受けるための礎を築くことである。「なぜそうなるのか?」を常に意識して、必要な知識・考え方の取得に努めることで、幅広い化学の分野の理解に役立つ強固な基礎力を身につけることができる。

到達目標

本講義では、以下の(1)〜(3)を到達目標とする。
(1) 周期律表に基づき、元素やイオンの性質を理解し、説明できるようになること
(2) 化学種同士の反応性、化合物の安定性を説明できるようになること
(3) 様々な物質を構成する化学結合を説明できるようになること

キーワード

物質科学、結合論、物性論、固体化学、酸塩基、酸化・還元

学生が身につける力(ディグリー・ポリシー)

専門力 教養力 コミュニケーション力 展開力(探究力又は設定力) 展開力(実践力又は解決力)

授業の進め方

1つのテーマにつき2〜3回を基本に進める。講義内容の理解度を深めるため、毎回の授業において演習を実施するとともに、講義内容に関する簡単な復習問題を宿題として課す。期末試験を除いた13回の講義はZoomを用いて行われる。

授業計画・課題

  授業計画 課題
第1回 「無機化学第一」概論・一年次の復習(量子数、原子軌道) 本講義で学ぶべき内容、目的を説明できるようになる。量子数、原子軌道を説明できるようになる。
第2回 原子の中の電子の振る舞い(遮蔽と貫入、電子配置、パウリの排他原理、フントの規則) 遮蔽と貫入の考え方に基づき、軌道とエネルギーの関係を説明し、第4周期程度までの元素の電子配置が書けるようになる。
第3回 元素の性質と周期律(周期律表、イオン化エネルギー、電子親和力) 軌道とエネルギーの関係に基づき、周期律表におけるイオン化エネルギーと電子親和力の変化を説明できるようになる。
第4回 元素の性質と周期律(電気陰性度、原子半径、イオン半径) 軌道とエネルギーの関係に基づき、周期律表における電気陰性度と原子(イオン)半径の変化を説明できるようになる。
第5回 共有結合と分子の構造(ルイス構造、オクテット則、共鳴、酸化数と原子価、構造と結合特性) 共有結合性分子のルイス構造をオクテット則に基づき描き、その酸化数を決定できるようになる。電子配置と電気陰性度に基づき、pブロック元素の結合特性を説明できるようになる。
第6回 共有結合と分子の構造(原子価結合法、VSEPR則、分子軌道法) 原子価結合法とVSEPR則に基づき、共有結合性分子の構造を記述できるようになる。二原子分子を例として、分子軌道法の基本的な考え方を説明できるようになる。
第7回 無機固体とその結合(固体の分類、バンド理論、金属結合、イオン結合、結晶構造) 電気伝導度に基づき、固体を3つのカテゴリに分類し、そのバンド構造を描けるようになる。イオン性固体の結晶構造を決める因子を説明できるようになる。
第8回 無機固体とその結合(物質の色と光吸収) 典型的な無機固体の色、光吸収の起源を説明できるようになる。
第9回 無機固体とその結合(格子欠陥、格子エンタルピー、ボルン・ハーバーサイクル) 固体の格子欠陥の成因を熱力学に基づき説明できるようになる。格子エンタルピーの概念を説明でき、ボルン・ハーバーサイクルを用いてそれを算出できるようになる。
第10回 酸塩基(ブレンステッド酸、超強酸、水平化効果、酸性酸化物と塩基性酸化物) 多塩基酸やハロゲン化水素などを例として、ブレンステッド酸強度の支配因子を説明できるようになる。超強酸とは何か、及びその酸強度の定量的評価法を説明できるようになる。結合特性に基づき、酸化物の酸塩基性の周期的な変化を説明できるようになる。
第11回 酸塩基(ルイス酸、HSAB理論、固体酸) ルイス酸塩基における硬さ・軟らかさの概念を説明し、その反応性を説明できるようになる。
第12回 酸化と還元(標準電極電位、化学電池、ネルンストの式) 化学電池の基本原理を熱力学の観点から説明できるようになる。
第13回 酸化と還元(ラチマー図、フロスト図、プールベ図) 酸化と還元に関し、ラチマー図、フロスト図、プールベ図を説明し、関連する計算問題が解けるようになる。
第14回 講義全体のまとめ 講義全般の内容に関する演習問題

授業時間外学修(予習・復習等)

学修効果を上げるため、教科書や配布資料等の該当箇所を参照し、「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。特に復習が重要である。

教科書

シュライバーアトキンス無機化学(上)第6版(東京化学同人)

参考書、講義資料等

三吉克彦, はじめて学ぶ大学の無機化学(化学同人)
その他、必要に応じて配布資料をOCW-iで配布する。

成績評価の基準及び方法

下記、(1)と(2)を80:20の割合で評価し、最終成績とする。
(1) 期末試験の結果
(2) 復習用課題の結果
期末試験は対面での実施を予定しているが変更となる可能性もある。詳細は初回の講義で説明する。

関連する科目

  • CHM.B202 : 基礎分析化学
  • CHM.B301 : 無機化学第二
  • CHM.B331 : 化学計測学
  • CHM.B335 : 固体化学
  • CHM.B203 : 無機化学演習第一

履修の条件(知識・技能・履修済科目等)

履修の条件は特に指定しないが、1年次化学基礎科目(無機化学基礎、量子化学基礎、有機化学基礎、化学熱力学基礎)を履修していることが望ましい。

その他

講義内容等に関する質問はメールで随時受け付ける。

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