2017年度 量子化学   Quantum Chemistry

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開講元
化学系
担当教員名
大島 康裕 
授業形態
講義     
メディア利用科目
曜日・時限(講義室)
月1-2(H136)  木1-2(H136)  
クラス
-
科目コード
CHM.C332
単位数
2
開講年度
2017年度
開講クォーター
3Q
シラバス更新日
2017年3月17日
講義資料更新日
2017年11月20日
使用言語
日本語
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講義の概要とねらい

 本講義は、「量子化学序論」で習得した量子化学の基礎をもとに更に学習を進めて、原子・分子の量子力学的状態、ならびに、光との相互作用に関する系統的理解を習得することを目的としている。具体的には以下の4点に関して、順序立てて講義を進める。
1)角運動量に関する量子力学の基礎原理を学習し、角運動量演算子を用いた計算に習熟する。
2)時間依存の摂動論を学習し、原子・分子における光の吸収・発光過程に関する基本法則を理解する。
3)磁気的相互作用に関する量子力学的取扱いを学習し、磁場に対する原子・分子の振る舞いを理解する。
4)前項までの基礎知識をもとにして、原子・分子における量子状態と光学遷移の詳細を理解する。

到達目標

本講義を履修することによって、以下の2つの能力を習得する。
1)角運動量や摂動論などの量子化学における基礎原理の利用法を理解し、原子・分子の微視的振る舞いに関する各種問題に対して適切に応用すること。
2)原子・分子の状態や光・磁場等の外的要因への応答に関する量子論的理解に立脚して、原子・分子の微視的構造や反応性を探求する方法論を理解すること。

キーワード

物理化学、量子力学、角運動量、光学遷移、原子・分子スペクトル

学生が身につける力(ディグリー・ポリシー)

専門力 教養力 コミュニケーション力 展開力(探究力又は設定力) 展開力(実践力又は解決力)

授業の進め方

(1) 各回で初めに前回の簡単な復習を行う。
(2) 講義の後半で、その日の授業内容に関連した簡単な演習問題に取り組む。
(3) 授業計画の項目について、授業前に予習しておくこと。

授業計画・課題

  授業計画 課題
第1回 角運動量の一般論 (1) 角運動量と昇降演算子 角運動量の交換関係を説明できる。 昇降演算子の行列要素を導出できる。
第2回 角運動量の一般論 (2) 角運動量の合成 2つの角運動量から合成された全角運動量の大きさを計算できる。 角運動量のベクトルモデルとは何かを説明できる。
第3回 角運動量の一般論 (3) スピン多重度、軌道角運動量とスピン角運動量 1重項および3重項スピン関数を示すことができる。 軌道角運動量とスピン角運動量の合成を説明できる。
第4回 光の吸収と発光 (1) 時間依存の摂動論 波動関数の1次の補正項を示すことができる。 定常的な摂動によるエネルギーと波動関数の変化について説明できる。
第5回 光の吸収と発光 (2) 光学遷移レートの導出 光学遷移に関する相互作用項を説明できる。 Fermiの黄金律を説明できる。
第6回 光の吸収と発光 (3) 誘導吸収・放出と自然放出 アインシュタインのA係数・B係数について説明できる。 自然放出の波長依存性について説明できる。
第7回 原子・分子の磁気的性質 (1) Zeeman効果と磁気共鳴 水素原子のZeeman効果を説明できる。 電子スピン共鳴(ESR)の原理を説明できる。
第8回 原子・分子の磁気的性質 (2) スピン軌道相互作用と原子のLS結合 スピン軌道相互作用の演算子を説明できる。 水素原子のLS結合を説明できる。
第9回 原子のエネルギー準位とスペクトル (1) 原子の項記号 第2周期までの原子について、その項記号を示すことができる。
第10回 原子のエネルギー準位とスペクトル (2) Slater行列式とHundの規則 Heの励起状態についてSlater行列式を示すことができる。 Hundの規則について説明できる。
第11回 原子のエネルギー準位とスペクトル (3) 吸収・発光の選択則 水素原子の光学遷移の選択則を説明できる。 リュードベリ状態とは何かを説明できる。
第12回 分子のエネルギー準位とスペクトル (1) Born-Oppenheimer近似、エネルギーの階層構造 Born-Oppenheimer近似の成立条件を説明できる。 電子・振動・回転エネルギーの大小関係を説明できる。
第13回 分子のエネルギー準位とスペクトル (2) 2原子分子の電子状態、Franck-Condon原理 窒素分子の電子状態について説明できる。 Franck-Condon原理について説明できる。
第14回 分子のエネルギー準位とスペクトル (3) 分子の振動・回転とスペクトル 振動遷移に対する選択則を示すことができる。 回転スペクトルと分子構造の関係を説明できる。
第15回 分子のエネルギー準位とスペクトル (4) 電子励起状態の緩和過程 蛍光寿命と無輻射遷移の関係を説明できる。 内部転換および項間交差について説明できる。

教科書

特になし。

参考書、講義資料等

マッカーリ・サイモン著、物理化学(上)、東京化学同人  
アトキンス著、物理化学、東京化学同人
アトキンス著、量子化学、(東京化学同人

成績評価の基準及び方法

量子力学の基礎原理、および、その原子・分子系への応用に関する理解度によって評価する。
成績評価は、試験と、講義で出題する課題へのレポートによる。評価基準は、レポート40%、期末試験60%。

関連する科目

  • LAS.C105 : 量子化学基礎
  • CHM.C203 : 量子化学序論演習
  • CHM.C201 : 量子化学序論

履修の条件(知識・技能・履修済科目等)

特に無し。量子化学序論などの関連科目を履修していることが望ましい。

連絡先(メール、電話番号)    ※”[at]”を”@”(半角)に変換してください。

大島康裕
ohshima[at]chem.titech.ac.jp

オフィスアワー

メールで予約すること。
大島康裕 (西4号館105B号室)

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