この講義では、多くの化学反応が起きる溶液の熱力学とそれに基づいた化学平衡の取扱いについて解説する。溶液中の化学種がどのような状態で、どれだけ存在するのかは分析してみないとわからない。しかし、平衡条件が既知の物質については計算によってそれらを決めることができる。理論的なバックグラウンドと計算方法を学修する。
このような溶液の熱力学、平衡論に基づいて重量分析や容量分析が設計されてきた。これらは一見古く見えるが、分析値の信頼性は高く、未だに最先端の分析法として用いられている。一見高校の化学で学んだことの復習のように思えるかもしれないが、本質はかなり概念的で理解が困難である。この概念を理解し、それらを酸性雨や二酸化炭素濃度増加による海水への影響などの現実的な問題に適用できる能力を養う。
本講義を履修することによって、溶液の熱力学、化学平衡の計算の考え方を修得する。これにより、溶液中に含まれる化学種の濃度を厳密に求めたり、濃度の大小、増減などを直感的に理解したりできるようになる。複数の平衡が絡み合う現実的な系についても取り扱えることを目指す。本講義では、溶液の熱力学と化学平衡が学習のテーマである。溶液を利用する化学では必ず必要となる基礎知識である。この概念を自分の言葉で語れるようになり、また実際の計算に対応できるようになることを目指す。
誤差の伝播、溶液の熱力学、化学平衡、酸塩基、錯生成、酸化還元、滴定
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
1) 毎回の講義の前半で,復習を兼ねて前回の宿題の解答を解説する。
2) 毎回の授業で宿題を出す。
3) 授業の前に、授業内容について教科書を読んで、予習しておくことが必要である。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 誤差の伝播 | 教科書1章の内容の理解 |
第2回 | 溶液の熱力学 | 一般熱力学の復習および溶液熱力学の基礎 |
第3回 | 活量と濃度 | 溶液における理想系と実在系の説明 |
第4回 | 水溶液における酸塩基平衡 | 教科書3章の内容の理解 |
第5回 | ブレンステズ酸塩基の平衡 | 教科書4章の内容の理解 |
第6回 | 酸塩基滴定 | 教科書5章および6章の内容の理解 |
第7回 | pH緩衝 | 教科書7章の内容の理解 |
第8回 | 1-7回の学習内容の総括および到達度の確認 | 到達度の自己評価および到達度試験 |
第9回 | 錯生成平衡 | 教科書8章の内容の前半部分の理解 |
第10回 | 複雑な錯生成平衡 | 教科書10章の内容のうち錯生成部分の理解 |
第11回 | 錯滴定 | 教科書8章の内容のうち滴定に関する部分の理解 |
第12回 | 沈殿平衡 | 教科書9章の内容の理解 |
第13回 | 種々の溶液内平衡による沈殿平衡への影響 | 教科書10章の内容のうち沈殿平衡部分の理解 |
第14回 | 酸化還元 | 教科書11章の内容の理解 |
第15回 | 複雑な酸化還元系 | 教科書12章の内容の理解 |
岡田他、「分析化学の基礎 ―定量的アプローチ―」、化学同人(京都) 978-4-7598-1465-1
1) Harris, D.C. "Quantitative Chemical Analysis", W.H.Freeman and Company (NY) 978-1-4292-1815-3
2) 講義資料は講義中に配付する
中間試験(45%)、期末試験(45%)、宿題(10%)により評価する。
履修条件は設けないが、関連科目を履修している(履修する)ことが望ましい