現代原子核物理の基本と応用についての講義を行う。多岐に亘る原子核の現象から特に重要な内容を取り上げる。最先端の核物理の文献に関連するレポート課題やディスカッションを通じて理解させる。
原子核は強い相互作用による強相関自己束縛系という他にはない特徴をもった有限量子多体系である。原子核の物理を学ぶことで量子力学、量子場の理論の基本と応用を理解してもらう。さらに加速器を用いた最先端の核物理の実験やその手法を紹介し、最先端の核物理についての理解を深める。
[到達目標] 量子物理学における自己束縛多体系として原子核に関する物理学について、基礎的事項を、最新の核物理分野(不安定核、ハイパー核など)で得られた成果を材料にして理解し、さらに宇宙物理や物性物理など周辺分野への応用を学ぶとともに、今後の研究への展望を開く。
[テーマ] 原子核の量子論的ダイナミクス、原子核の構造および反応、強い相互作用に関する理論と実験の概要および最先端の成果を修得する。
原子核, 強い相互作用, 核力, 自己束縛系, 量子多体系, 核構造, 核反応, 加速器実験, 不安定核, 元素合成,ハイパー核,ストレンジネス
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
関澤が中性子と陽子の自由度による核物理、特に核子多体系を記述する微視的理論とその応用について講義を行う。藤岡がハイペロンを含む原子核(ハイパー核)などの広義の原子核の物理を講義する。講義は原則英語で行い、配布物を活用しつつスライドを主として用いる。補助的に黒板を用いて要点を説明する。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 原子核物理学の概観 | 核子多体系の物理の奥深さを理解する |
第2回 | 平均場理論:Hartree-Fock理論と密度汎関数理論 | 核子多体系を記述する微視的平均場理論の基礎を習得する |
第3回 | 核子対相関:Bardeen-Cooper-Schrieffer理論とHartree-Fock-Bogoliubov理論 | 平均場理論を用いて対相関がどのように記述されるのか理解する |
第4回 | 原子核の集団励起:乱雑位相近似 | 乱雑位相近似を用いて原子核の集団励起がどのように記述されるのか理解する |
第5回 | 原子核反応:時間依存平均場理論 | 時間依存平均場理論を用いて様々な原子核反応がどのように記述されるのか理解する |
第6回 | 状態方程式と中性子星 | 状態方程式と中性子星の構造の関係性および高密度核物質に現れる様々な構造を理解する |
第7回 | 量子渦とパルサーグリッチ現象 | 超流動体(超伝導体)における量子渦(フラックスチューブ)の性質およびそのパルサーグリッチ現象との関わりを理解する |
第8回 | ハイパー核物理の基礎 | 平均場的な核模型を理解する |
第9回 | Λハイパー核の生成 I | 中間子ビームを用いたΛハイパー核の生成手法を理解する |
第10回 | Λハイパー核の生成 II | 電子ビームを用いたΛハイパー核の生成手法を理解する |
第11回 | Λハイパー核の構造 | Λハイパー核の構造とハイペロン核子間相互作用を理解する |
第12回 | Λハイパー核の崩壊 | Λハイパー核の崩壊機構を理解する |
第13回 | Σハイパー核とΞハイパー核 | Σハイパー核とΞハイパー核の研究に触れる |
第14回 | ダブルΛハイパー核 | ダブルΛハイパー核の研究に触れる |
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
指定なし。
講義の際、あるいはOCWを通じて配布する。
試験、および講義で示される課題に対するレポートによって評価する
基礎的な量子力学の講義を履修していること
日程については別途確認すること。最初の講義で関澤、藤岡の講義の順番(スケジュール)を示す。