物理学諸分野に対する情報論的なアプローチが近年極めて重要となっている.これは,情報論的アプローチがくりこみ群等の深遠な体系に迫る効果的な現象論的位置づけにあるためである.この典型として,エンタングルメントをはじめとした量子情報理論の概念に基づいて,量子系の波動関数の構造論について論じる.またその構造と時空物理との深い関わりについて論じる.更に,これらの背景となる特異値分解,ウェーブレット,情報幾何などの基礎数理に豊かな内容が込められていることに触れる.これらにより,近年の異分野融合研究のトレンドや思考法について習熟し,量子情報物理学の背後にある数理構造の包括的理解を目指す.
・量子情報物理学に現れる特徴的な数理を理解する.
・量子多体状態を理解するための指標としてのエンタングルメントを理解する.
・エンタングルメント・エントロピーの示すスケーリング公式を理解する.
・系の臨界性に応じた波動関数の数理構造を理解する.
・量子状態の幾何学について理解を深め,その発展としての時空物理の見方やゲージ重力対応について理解する.
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✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
講義を主体に行う.
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 量子スピン系 | 量子スピン系が持つ数理構造の理解 |
第2回 | 特異値分解 | 特異値分解の機能性の理解 |
第3回 | エンタングルメント | エンタングルメント・エントロピーの持つスケーリング特性の理解およびくりこみ群との親和性の理解 |
第4回 | テンソルネットワーク変分法とベーテ仮説法 | エンタングルメントに基づく波動関数の構造論の理解およびベーテ仮説法との関係性の理解 |
第5回 | 情報と幾何学の関わり | MERA,ウェーブレット解析,ブラックホール熱力学など,情報と幾何学(重力)が深く関わる諸課題の理解 |
第6回 | テンソル自由度から時空へ | コンパクト化,バルク境界対応(ゲージ重力対応),時空変形など,くりこみ群の現代的な視点の理解 |
第7回 | 情報論的視点によるゲージ重力対応の解析 | 量子情報のメモリ空間の幾何学としての時空物理の理解 |
第8回 | 相関関数行列への特異値分解による量子多体状態の解析 | セミナー |
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する 予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
なし
講義資料は適宜配布する.参考書は以下の通り.
・松枝宏明著 量子系のエンタングルメントと幾何学-ホログラフィー原理に基づく異分野横断の数理-(森北出版)
・高柳匡著 ホログラフィー原理と量子エンタングルメント 臨時別冊・数理科学 SGCライブラリ106(サイエンス社)
・堀田昌寛著 量子情報と時空の物理 -量子情報物理学入門- 臨時別冊・数理科学 SGCライブラリ103(サイエンス社)
レポート
量子力学と統計力学の基礎を理解していること