2018年度 ハドロン物理学   Hadron Physics

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開講元
物理学コース
担当教員名
柴田 利明 
授業形態
講義     
メディア利用科目
曜日・時限(講義室)
月3-4(H119A)  木3-4(H119A)  
クラス
-
科目コード
PHY.F430
単位数
2
開講年度
2018年度
開講クォーター
1Q
シラバス更新日
2018年3月20日
講義資料更新日
-
使用言語
日本語
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講義の概要とねらい

ハドロンは強い相互作用をする粒子の総称で、バリオンと中間子に大別される。ハドロンの代表例は陽子、中性子、パイ中間子である。現在我々が直接観測できる宇宙の質量のほとんどは、ハドロンによるものである。授業では、ハドロンはクォーク、反クォークによって構成されていることを説明し、その量子数であるフレーバー(香り)と色電荷の特性を説明する。強い相互作用の理論である量子色力学(QCD)に基づいて、力を媒介するグルーオンの役割を説明する。強い相互作用の結合定数と、QCDの特徴である漸近的自由について説明する。高エネルギー反応で測定されるハドロンの構造関数とパートン分布関数を説明する。核子のスピン構造を説明する。ハドロンの弱い相互作用における対称性の破れを、電弱相互作用の標準模型に基づいて説明する。低エネルギーでのハドロンの現象の理解に有効な模型や、ハドロンの質量の起源についても解説する。ハドロン物理の実験手法についても説明する。(留学生の要望があれば英語で講義する)

この講義のねらいは、現在の宇宙を構成するハドロン、およびその基礎となっているクォークとグルーオンについて学生が理解し、強い相互作用の理論である量子色力学を習得することである。実験によってハドロンの物理がどのように解明されてきたかを理解することも講義のねらいである。

到達目標

【到達目標】本講義を履修することによりハドロンの物理の基本を理解することを目標とする。強い相互作用の特徴、クォークに基づいたハドロンの記述、量子色力学の特徴を理解できるようになることが到達目標である。

【テーマ】強い相互作用、クォーク模型とパートン模型、クォークのフレーバー、世代、色電荷、グル―オン、漸近的自由、弾性散乱と深非弾性散乱、構造関数、パートン分布関数、核子のスピン構造、弱い相互作用、質量の起源、クォークグル―オンプラズマ、実験手法等をテーマとする。

キーワード

強い相互作用、クォーク模型、パートン模型、フレーバー、世代、バリオン、中間子、色電荷、グルーオン、量子色力学、漸近的自由、構造関数、パートン分布関数、核子のスピン構造、弱い相互作用、質量の起源、大きな質量を持つクォークを含むハドロン、クォーク・グルーオン・プラズマ、実験手法

学生が身につける力(ディグリー・ポリシー)

専門力 教養力 コミュニケーション力 展開力(探究力又は設定力) 展開力(実践力又は解決力)

授業の進め方

黒板とプロジェクターを用いて説明する。演習問題も扱う。

授業計画・課題

  授業計画 課題
第1回 ハドロンと強い相互作用 中間子論からクォーク模型、量子色力学(QCD)に至る展開を説明できるようになる。
第2回 クォーク模型とパートン模型 クォーク模型とパートン模型が実験結果から提案されるに至った理由、および両者の関係を説明できるようになる。
第3回 クォークのフレーバー、バリオンと中間子の分類 クォーク模型に基づいてバリオンと中間子の構成を説明できるようになる。
第4回 グルーオン、色電荷、漸近的自由、量子色力学(QCD) 漸近的自由の意味を把握する。
第5回 弾性散乱と形状因子 非相対論的および相対論的な弾性散乱と形状因子の意味を説明できるようになる。
第6回 深非弾性散乱、構造関数とパートン分布関数 ブヨルケン・スケーリングの意味を説明できるようになる。
第7回 核子の構造、和則 和則の種類を挙げて説明できるようになる。
第8回 核子のスピン構造 核子スピンに対するクォークスピン、グルーオンスピンの寄与を説明できるようになる。
第9回 ハドロン物理の実験手法:加速器・貯蔵リング・冷却・測定器・偏極標的 実験の手法と精度を説明できるうようになる。
第10回 ハドロンの弱い相互作用(1) 電弱相互作用の標準模型 弱アイソスピンとは何かを説明できるようになる。
第11回 ハドロンの弱い相互作用(2) パリティの破れ、CP対称性の破れ 対称性の破れの具体例を挙げて、説明できるようになる。
第12回 クォーク、ハドロンの質量の起源 カイラル対称性の破れと質量の起源の関係について説明できるようになる。
第13回 チャーム、ボトムクォークを含むハドロン 質量の大きなクォークを持つハドロンの特徴を説明できるようになる。
第14回 高エネルギー重イオン衝突におけるハドロン物理 クォーク・グルーオンプラズマはどのような反応で探索されているかを説明できるようになる。
第15回 宇宙・天体物理におけるハドロン 宇宙・天体物理におけるハドロンの役割を説明できるようになる。

教科書

特になし

参考書、講義資料等

「素粒子・原子核物理入門 改訂新版」B. ポッフら著、柴田利明訳、丸善出版
留学生にはその英語版 'Particles and Nuclei', B. Povh et al., Springer 

成績評価の基準及び方法

中間・期末試験、および授業中の演習による

関連する科目

  • PHY.F350 : 原子核物理学
  • PHY.F437 : 原子核物理学発展
  • PHY.F351 : 素粒子物理学
  • PHY.F436 : 素粒子物理学発展

履修の条件(知識・技能・履修済科目等)

量子力学を学んであること。

その他

留学生が希望する場合は英語で行う。それ以外でも、授業の一部分を英語で行う場合がある。

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