磁性学は基礎と応用を含む幅広い学問で,長い研究の歴史がある。本講義では絶縁性磁性体の磁性について講義する。
物質の磁気現象には,量子力学と多体効果が顕著に現れる。まず,固体中の磁性原子の電子状態からスタートし,磁性の担い手である電子のスピン間に働く交換相互作用などの磁気相互作用の説明と行う。続いて,最も安定な基底状態の磁気構造,相転移と臨界現象について述べる。その後は,磁気励起について説明する。また,磁性研究で重要な実験技術についても説明をする。更に,最近研究が盛んに行われている量子効果が顕著な低次元磁性やフラストレーションの強い磁性体の性質について紹介する。
本講義を履修することにより,以下の知識と能力を修得する。
1) 磁性原子(イオン)の電子状態を理解できる。
2) 磁気相転移とその原動力となる交換相互作用を理解できる。
3) 磁気励起を理解できる。
4) 磁性研究の実験手法を理解できる。
5) 最先端の研究を知ることができる。
磁性,スピン,結晶場,交換相互作用,磁気構造,相転移,臨界現象,磁気励起,量子スピン系,フラストレーション
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
講義の2/3は基礎的内容について,残る1/3は発展的内容と最先端の研究についての解説に充てる。
授業計画 | 課題 | |
---|---|---|
第1回 | 磁性原子(イオン)の電子状態 | 磁性原子(イオン)の電子状態を説明せよ。 |
第2回 | 結晶場の効果 | 結晶場による電子状態の分裂を説明せよ。 |
第3回 | 交換相互作用 | 直接交換相互作用と超交換相互作用を説明せよ |
第4回 | 基底状態の磁気構造 | 古典スピンハイゼンベルク模型の基底状態を説明せよ。 |
第5回 | 相転移と臨界現象 | 反強磁性体の相転移を分子場近似で説明せよ。 |
第6回 | 磁気励起 | スピン波を説明せよ。 |
第7回 | 磁性研究の実験手法 | 磁場の発生法と測定方法をいくつか説明せよ。 |
第8回 | 量子スピン系とフラストレーションの強い磁性体 | 磁気量子相転移を例を示して説明せよ。 |
久保健,田中秀数 著:「磁性 I」朝倉書店
金森順次郎 著:「磁性」培風館,芳田 奎 著:「磁性」岩波書店,上村 洸,菅野 暁,田辺 行人 著:「配位子場理論とその応用」裳華房,小口 武彦 著:「磁性体の統計理論」裳華房
到達度をレポートで評価する。
履修の条件を設けない。
tanaka[at]lee.phys.titech.ac.jp, 3541
メールで事前予約すること。