ハドロンは強い相互作用をする粒子の総称で、バリオンと中間子に大別される。現在我々が直接観測できる宇宙の質量はそのほとんどがハドロンによるものである。授業ではハドロンを構成するクォークについて説明し、その対称性によりバリオンと中間子の分類を行う。強い相互作用の理論である量子色力学においてグル―オンの果たす役割を説明し、高エネルギー反応におけるパートンと構造関数を説明する。ハドロンの弱い相互作用を電弱相互作用の標準模型の中に位置づけ、対称性の破れを説明する。ハドロンの質量の起源やクォーク・グル―オン・プラズマについても解説する。
この講義のねらいは、現在の宇宙を構成するハドロン、およびその基礎となっているクォークとグルーオンについて学生が理解し、強い相互作用の理論である量子色力学を習得することである。ハドロンの物理がどのような実験によって解明されてきたかを理解することも講義のねらいである。
【到達目標】本講義を履修することによりハドロンの物理の基本を理解することを目標とする。強い相互作用の特徴、クォークに基づいたハドロンの記述、量子色力学の特徴を理解できるようになることが到達目標である。
【テーマ】強い相互作用、クォークのフレーバー、世代、クォーク模型とそれによるハドロンの記述、ストレンジクォークとハイペロン、グル―オン、弾性散乱と深非弾性散乱、構造関数、パートン模型、弱い相互作用、質量の起源、クォークグル―オンプラズマ等をテーマとする。
強い相互作用、クォーク、フレーバー、世代、中間子、バリオン、ハイペロン、グルーオン、パートン模型、弱い相互作用、質量の起源、ストレンジクォーク、ハイペロン、クォーク・グルーオン・プラズマ
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
要点を黒板で説明する。具体的な問題も扱う。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | ハドロンと強い相互作用 | ハドロンの崩壊と反応を、相互作用の種類によって分類できるようになる。 |
第2回 | ハドロン物理の歴史 | ハドロン物理の歴史において主要な発見を述べることができるようになる。 |
第3回 | クォークのフレーバーと世代 | 3世代以上存在する可能性があるか、について説明できるようになる。 |
第4回 | クォーク模型による中間子とバリオン | 反クォークの特徴を述べることができるようになる。 |
第5回 | ストレンジクォークとハイペロン | ストレンジクォークとアップクォーク、ダウンクォークの差を述べることができるようになる。 |
第6回 | グル―オンと色の自由度、量子色力学 | グルーオンの色の自由度の数がどのようにして決まるかを説明できるようになる。 |
第7回 | 弾性散乱と形状因子 | 非相対論的な弾性散乱と相対論的な弾性散乱の違いを説明できるようになる。 |
第8回 | 深非弾性散乱、構造関数とパートン | ブジョルケン x の意味を説明できるようになる。 |
第9回 | 核子の構造、和則 | 和則の種類を挙げて説明できるようになる。 |
第10回 | ハドロンの弱い相互作用 (1) 電弱相互作用の標準模型 | 弱アイソスピンとは何かを説明できるようになる。 |
第11回 | ハドロンの弱い相互作用 (2) パリティの破れ、CP対称性の破れ | パリティの破れの具体例を挙げて、説明できるようになる。 |
第12回 | クォーク、ハドロンの質量の起源 | 対称性の破れと質量の起源の関係について説明できるようになる。 |
第13回 | チャーム、ボトムクォークを含むハドロン | 質量の大きなクォークを持つハドロンの特徴を説明できるようになる。 |
第14回 | クォーク・グル―オン・プラズマ | クォーク・グルーオン・プラズマはどのような反応で研究されているかを述べられるようになる。 |
第15回 | 宇宙・天体物理におけるハドロン | 宇宙・天体物理におけるハドロンの役割を説明できるようになる。 |
特になし
「素粒子・原子核物理入門」(B.ポッフ、K.リーツ、C.ショルツ、F.サッチャ著、柴田利明訳、丸善)
試験、授業中の議論への参加、およびレポートによる
量子力学を学んであること。