本講義では、宇宙物理学および天文学の基礎的な知識を紹介し、宇宙現象を理解するのに必要な物理の理論的枠組みについて入門的な説明をする。本講義のねらいは、日常感覚からかけ離れた天体現象を、基本的な物理法則に基づいて理解することである。また、物理法則を具体的な天体現象に適用して物理量のオーダー推定(桁がわかる程度の概算)する訓練から、現実の問題での物理実践力を養うことを狙う。
【到達目標】 最新の観測によって得られた宇宙像と未解明の問題を紹介する。そのために必要な天体現象に関わる基礎的な概念と知識を習得し、物理法則にもとづいて天体現象を概念的理解する。
【テーマ】 宇宙は、人類にとって最も魅力的な知的対象である。その探求は、太陽や月から始まり、惑星、恒星へと広がり、さらに、天の川銀河を飛び越え、宇宙の果てまで及んできた。その面白さに物理学の観点から触れる。
天体の放射過程、電磁波、恒星の構造、恒星の進化、中性子星、ブラックホール、銀河、ハッブルの法則、ビッグバン、宇宙背景放射、重力波、ビッグバン、宇宙背景放射、重力波、望遠鏡、検出器
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
スライドを用いて講義を行う。T2SCHOLAによるクイズ等も行うので、ネット接続可能なスマホかパソコンを持参して授業に参加すること。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 現代宇宙物理学の課題 | 天体現象と物理法則の関連を理解する |
第2回 | 宇宙の距離の測り方 | 天体の距離の測定法と原理を列挙する。 |
第3回 | 輻射(放射)・黒体放射 | 黒体とみなせる恒星のスペクトルと放射エネルギーを示せ。 |
第4回 | 恒星の内部構造 | 恒星の構造を決める基本方程式を示せ。 |
第5回 | 恒星の一生と死 | 主系列時期から終焉までの恒星の進化を説明せよ。 |
第6回 | 超新星残骸と宇宙線 | 超新星残骸のセドフ解を近似的に導け |
第7回 | 中性子星 | パルサーの年齢と表面磁場を回転周期とその変化率から推定する式を導け。 |
第8回 | X線連星 | X線連星の標準的な中性子星のエディントン光度とそれに対応する物質降着率を求めよ |
第9回 | ブラックホール | ブラックホールの存在を観測的に確かめる方法を述べよ。 |
第10回 | 宇宙ジェットと超光速火の玉 | ガンマ線バーストのコンパクト問題が相対論的運動によって解決できることを示せ。 |
第11回 | 短いγ線バーストと重力波 | 短いγ線バーストの起源が中性子星連星の合体と考えられる理由を長いγ線バーストと対比して説明せよ。 |
第12回 | 宇宙の始まりと宇宙背景放射 | 膨張宇宙モデルで宇宙項と曲率が0の場合においてハッブル定数と宇宙の年齢の関係を示せ。 |
第13回 | 宇宙初期の星と銀河 | 宇宙の再電離とは何か、またその時期の天体の観測が可視光ではなく赤外線で行われる理由を説明せよ。 |
第14回 | 暗黒物質 | 暗黒物質を考える理由を説明せよ。 |
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
教科書は使わない。資料はT2SCHOLAに掲載する。
天文学会100周年記念事業「シリーズ現代の天文学」全17巻[日本評論社]
福江純・沢武文編『超・宇宙を解く−現代天文学演習』[恒星社厚生閣]
高原文郎他『宇宙物理学ハンドブック』[朝倉書店]
期末試験により評価する。
履修の条件は設けないが、力学、電磁気学、量子力学、統計物理学の基本を履修していることが望ましい。