本講義の主要なテーマは,楕円型,放物型に属する非線形偏微分方程式を解析するための方法論の一つである粘性解理論である.粘性解理論は,1980年代前半にCrandallとLionsにより導入された弱解理論の一つで,最適制御理論に現れる完全非線形偏微分方程式に分類されるハミルトン・ヤコビ方程式や界面運動に現れる平均曲率流方程式を代表とする幾何学流を解析するための手段として標準的なものである.
内容としては,粘性解理論の基礎(比較原理,存在,安定性,解公式)について学び,その上で比較的最近の話題である外力付平均曲率流の等高面方程式のノイマン境界値問題の解の漸近挙動について理解することを目指す.講義はなるべく事前の知識がなくとも理解できる内容にしたい.
(a) 粘性解の定義と整合性について理解すること
(b) 1階偏微分方程式に対する基礎理論(比較原理,解の存在,L^\inftyノルムに対する解の安定性)について証明を理解すること
(c) Crandall-Ishiiの補題の主張について理解して,2階偏微分方程式に対する比較原理に応用できるようになること
(d) 解の表現公式について理解すること
(e) 解の正則性(特に,解のリプシッツ評価)について理解すること
(f) 外力付平均曲率流の等高面方程式の時間大域的リプシッツ評価と長時間挙動について理解すること
粘性解理論,幾何学流,界面運動,等高面法,ハミルトン・ヤコビ方程式,平均曲率流方程式
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
通常の講義形式で行う.また,適宜レポート課題を出す.
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 以下の内容を順に解説する予定である. (a) 粘性解の定義 (b) 1階偏微分方程式に対する基礎理論(比較原理,解の存在,L^\inftyノルムに対する解の安定性) (c) Crandall-Ishiiの補題,2階偏微分方程式に対する比較原理 (d) 解の表現公式 (e) 解の正則性 (f) 外力付平均曲率流の等高面方程式の時間大域的リプシッツ評価と長時間挙動 | 講義中に指示する. |
特に「使用しない」
Yoshikazu Gig, Surface Evolution Equations, Birkhauser (2006),
Hung Vinh Tran,Hamilton-Jacobi Equations: Theory and Application, American Mathematical Society (2021)
レポート課題(100%)による.出席数も考慮する.
なし