2017年度 数学最先端特別講義J   Special lectures on current topics in Mathematics J

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開講元
数学コース
担当教員名
田口 雄一郎  山内 卓也 
授業形態
講義     
メディア利用科目
曜日・時限(講義室)
集中講義等 (H201)  
クラス
-
科目コード
MTH.E640
単位数
2
開講年度
2017年度
開講クォーター
4Q
シラバス更新日
2017年3月17日
講義資料更新日
-
使用言語
日本語
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講義の概要とねらい

本講義の目的はガロア表現の保型性に纏わるセール予想とその一般化の現状について学ぶ。ガロア表現とは代数体の絶対ガロア群の線形表現のことである。表現の係数は複素数、有限体、局所体等いろいろな設定がある。ガロア理論を経由すればガロア群は有限群の複素係数線形表現から構成されるガロア表現の例である。幾何的な起源をもつ対象、例えば、代数多様体からはエル進エタールコホモロジーを通してエル進体係数のガロア表現が構成される。一方で保型形式からも幾何や跡公式を援用してガロア表現が構成される。ガロア表現を与えたときどのような幾何的対象や保型形式が対応するという問題(これを保型性問題という)は有名なフェルマー予想の解決をもたらす志村谷山予想に関連しており、ワイルズによる解決後爆発的に発展して周辺分野を促進させた。ガロア表現の保型性を解決する方法としては、現在では正標数係数のガロア表現に対する保型性問題の解決とその保型性を標数零に持ち上げる保型性持ち上げ定理を確立する、ことで実行することが標準的な流れである。しかし、前者の問題、それをセール予想と呼ぶ、は一番簡単な有理数体上のGL(2)に関する場合しか解決されておらず、問題をどのように定式化すればよいか解決に向けたはっきりとした方針は立っていないのが現状である。
今回の講義ではまずガロア表現や保型形式の基礎を習った後に原型である有理数体上のGL(2)の場合のセール予想とそのKhare-Wintenberger による証明を簡単に概観する。そして、それがどのように一般化され、またその過程でどういうことが問題となってくるかに焦点を当てて講義を進めていきたい。また、それと同時にガロア表現や保型形式に関する基礎知識を習得することも目的とする。

到達目標

ガロア表現の基礎理論を習得し、どういう対象がどういう幾何的対象および解析的対象と結びつくかその原理や背景およびその周辺に現れる数学について触れることを目標とする。具体的には以下の通り:

1. ガロア表現の定義とその構成方法
2. 保型形式の基本的性質の理解
3. 保型性問題の理解
4. セール予想の内容の理解

キーワード

ガロア表現、保型形式、保型性問題、セール予想

学生が身につける力(ディグリー・ポリシー)

専門力 教養力 コミュニケーション力 展開力(探究力又は設定力) 展開力(実践力又は解決力)

授業の進め方

通常の講義形式で行う.また,適宜レポート課題を出す.

授業計画・課題

  授業計画 課題
第1回 以下の内容を順に解説する予定である. ・ガロア表現の基礎 ・保型形式の基礎 ・有理数体上のGL(2)の場合のセール予想 ・総実代数体上のGL(2)の場合のセール予想 ・一般の場合のセール予想 ・テータ作用素とテータサイクル GL(2)/Qの場合 ・重さ還元定理1 GL(2)/Qの場合 ・重さ還元定理2 GSp(4)の場合 テータ作用素 ・重さ還元定理 GSp(4)の場合 Ekedahl-Oort 階層と部分Hasse不変量 ・今後の展望 講義中に指示する.

教科書

使用しない

参考書、講義資料等

2009年度整数論サマースクール「l進ガロア表現とガロア変形の整数論」(webから入手可能)
R=Tの最近の発展--佐藤・Tate予想とSerre予想--(webから入手可能)

成績評価の基準及び方法

レポート課題(100%)による.

関連する科目

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履修の条件(知識・技能・履修済科目等)

代数学及び数論の基礎的な知識を有すること。

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