2017年度 数学特別講義L   Special lectures on advanced topics in Mathematics L

文字サイズ 

アップデートお知らせメールへ登録 お気に入り講義リストに追加
開講元
数学コース
担当教員名
小野寺 有紹  宮本 安人 
授業形態
講義     
メディア利用科目
曜日・時限(講義室)
集中講義等 (H201)  
クラス
-
科目コード
MTH.E536
単位数
2
開講年度
2017年度
開講クォーター
4Q
シラバス更新日
2017年3月17日
講義資料更新日
-
使用言語
日本語
アクセスランキング
media

講義の概要とねらい

 この講義では,反応拡散方程式(または反応拡散系)と呼ばれる半線形放物型偏微分方程式の定常問題として現れる,半線形楕円型偏微分方程式の解の形状と解の安定性について考える.例えば,シマウマの縞模様や巻貝の模様や流体の対流(の方程式を簡単化したもの)などが,この方程式(系)で記述されることが知られている.反応拡散方程式は,20世紀前半から現在まで,長い研究の歴史がある.この方程式は時間発展方程式であるが,その研究の第一歩として,定常解(時間に依らない定常状態)を求めたい.反応拡散方程式は,物理学や化学や生物学において現れるモデル方程式という側面が強いため,定常解の中でも物理的に実現可能である安定定常解が興味ある対象となる.そこで,非自明な安定定常解が存在するのか?,存在するとすれば,領域や非線形項や解の形状と,どのような関係があるのか?などについて考察する.特に,連立半線形楕円型方程式については解析が困難であるため,シャドー系と呼ばれる近似方程式系を導入する.シャドー系における安定定常解の形状を探る問題が,「ホットスポット予想」と呼ばれる熱方程式に関する有名な未解決問題と密接に関連することを解説し,非線形解析の手法を用いて,条件付きではあるが証明を与える.さらに,この予想を一般化した,「非線形ホットスポット予想」を,特殊な領域の場合について証明し,この方面の今後の課題について解説する.
 反応拡散方程式系の定常解とその安定性について考察する過程で,抽象的な関数解析の様々な定理が,具体的な問題にいかに応用され便利な道具であるかを実感することになるであろう.

到達目標

・与えられた反応拡散方程式または反応拡散系が,どのようなタイプ(協調系,競争系,活性化因子・抑制因子系)になるかを判定できるようになること
・与えられた非線形方程式に対して,線形化固有値問題を導けるようになること
・固有値に関する基本的な性質を挙げられ,使いこなせるようになること
・固有関数の零等高線の満たす性質を挙げられ,使いこなせるようになること
・非線形ホットスポット予想のステートメントをかけるようになること

キーワード

放物型偏微分方程式,楕円型偏微分方程式,反応拡散系,シャドー系,解の安定性,解の形状,線形化固有値問題,ホットスポット予想,非線形ホットスポット予想

学生が身につける力(ディグリー・ポリシー)

専門力 教養力 コミュニケーション力 展開力(探究力又は設定力) 展開力(実践力又は解決力)

授業の進め方

通常の講義形式で行う.最終回にレポート課題を出す.

授業計画・課題

  授業計画 課題
第1回 反応拡散方程式(または反応拡散系)の具体例を挙げ,先行結果を振り返り,方程式の「型」と挙動がどのように対応するかを概観する.凸領域におけるNeumann境界条件下における単独反応拡散方程式の安定定常解は定数定常解に限ることを証明する.反応拡散系の場合は,系がある種の構造を持つ場合に,同種の定理が成り立つことを見る.この構造を持たない場合は,凸領域であっても非定数安定定常解を持つことが期待されるが,実際に活性化因子・抑制因子系と呼ばれる系についてはそのことが成り立つことを示す.さらに,その簡単化した系(シャドー系)を導入し,安定解の形状について考察する.さらにそこで用いられた手法を応用し,2次元凸のある領域のクラスについて,ホットスポット予想を肯定的に解決する. 講義中に指示する.

教科書

使用しない.

参考書、講義資料等

なし

成績評価の基準及び方法

レポート課題(100%)による.

関連する科目

  • MTH.C351 : 函数解析

履修の条件(知識・技能・履修済科目等)

なし

このページのトップへ