代数多様体上の(あるいはより一般にネータースキーム上の)Chow群は,複素代数曲線(リーマン面)上の因子類群や代数的整数環のイデアル類群など古典的な不変量の拡張である。本講義では、Chow群の定義と基本性質、および基本的な問題意識(どこが難しく、何が問題なのか)を解説した後、非アルキメデス的局所体(主にp進体)上の多様体0サイクルのChow群の場合に、Brauer群との間の自然なペアリング(Brauer-Maninペアリング)を用いたアプローチ(ある種の非退化性)について解説する。さらに、この非退化性が、p進整数環上の正則(かつ固有的な)モデルのサイクル写像の言葉で言い換えられることについても解説したい。
・Chow群の定義について理解する。
・p進体上の多様体の0サイクルのChow群とBrauer群の関係について理解する。
・整数環上のスキームのサイクル写像の全射性と既存のサイクルの問題との関係を理解する。
代数多様体,代数的サイクル,Chow群,Brauer群,Brauer-Maninペアリング,サイクル写像
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
集中講義形式で行い,適宜レポート課題を出す。
授業計画 | 課題 | |
---|---|---|
第1回 | 集中講義の概要,代数的サイクルの基本事項 | 講義中に指示する |
第2回 | 有理同値とChowの移動の補題 | 講義中に指示する |
第3回 | 0サイクルのChow群とAlbanese写像 | 講義中に指示する |
第4回 | Chow群とGrothendieck群の関係1 | 講義中に指示する |
第5回 | Chow群とGrothendieck群の関係2 | 講義中に指示する |
第6回 | 体のBrauer群とGaloisコホモロジー1 | 講義中に指示する |
第7回 | 体のBrauer群とGaloisコホモロジー2 | 講義中に指示する |
第8回 | スキームのBrauer群とエタールコホロジー1 | 講義中に指示する |
第9回 | スキームのBrauer群とエタールコホロジー2 | 講義中に指示する |
第10回 | p進体上の多様体のLichtenbaum-Maninペアリング1 | 講義中に指示する |
第11回 | p進体上の多様体のLichtenbaum-Maninペアリング2 | 講義中に指示する |
第12回 | p進体上の多様体のLichtenbaum-Maninペアリング3 | 講義中に指示する |
第13回 | 整数環上のスキームのサイクル写像1 | 講義中に指示する |
第14回 | 整数環上のスキームのサイクル写像2 | 講義中に指示する |
第15回 | 整数環上のスキームのサイクル写像3 | 講義中に指示する |
使用しない.
Hartshorne, R.: Algebraic Geometry, (Graduate Texts in Math. 52), Springer 1977
斎藤秀司・佐藤周友(著)「代数的サイクルとエタールコホモロジー」 (シュプリンガー現代数学シリーズ17) 丸善出版,2012年
レポート課題(100%)による.
代数学における基本事項を修得していることが望ましい