本講義では複素多様体上の正則曲線について解説する。滑らかな複素多様体は抽象的に定義する上では易しいが、具体的に調べようとするとその滑らかさのために手掛かりを見つけるのが困難なことがしばしばある。多様体の特異点はそれ自体複雑な構造を持ち多様体の研究の障壁となりうるが、一方で多くの情報が集中しているとも考えられ、様々な研究の手掛かりとなりうる。このような考え方が正則曲線の研究にいかに適用されるかを具体例を通して見る。
はじめにトーリック多様体の初歩について触れたのち、2次元複素トーラスを例に特異トーリック多様体への退化を具体的に構成する。この場合を例として、退化した多様体上の正則曲線の情報とトロピカル曲線と呼ばれる組み合わせ的な対象の対応を考察し、それに基づいていかに元の多様体の情報が得られるかを学ぶ。
・トーリック多様体の初歩を理解すること。
・多様体の退化の具体例を理解すること。
・退化した多様体上の正則曲線の構成を理解すること。
・簡単な正則曲線の変形について理解すること。
複素多様体、正則曲線、トーリック多様体。トーリック退化、複素トーラス、変形理論、障害
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
通常の講義形式で行う.また,適宜レポート課題を出す.
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | トーリック多様体の初歩について 1 | 講義中に指示する |
第2回 | トーリック多様体の初歩について 2 | |
第3回 | 複素多様体のトーリック退化について 1 | |
第4回 | 複素多様体のトーリック退化について 2 | |
第5回 | 退化した多様体上の正則曲線の構成について 1 | |
第6回 | 退化した多様体上の正則曲線の構成について 2 | |
第7回 | トロピカル曲線の初歩について 1 | |
第8回 | トロピカル曲線の初歩について 2 | |
第9回 | トロピカル曲線の初歩について 3 | |
第10回 | 変形理論と障害について 1 | |
第11回 | 変形理論と障害について 2 | |
第12回 | 変形理論と障害について 3 | |
第13回 | 正則曲線の場合の変形の障害の具体的な計算について 1 | |
第14回 | 正則曲線の場合の変形の障害の具体的な計算について 2 | |
第15回 | 正則曲線の場合の変形の障害の具体的な計算について 3 |
使用しない.
特になし
レポート課題(100%)による.
幾何学における基本事項を修得していることが望ましい