本講義は、エネルギー市場におけるファイナンス(担当 大橋)とデータ分析(担当 山本)を扱う。より具体的には、前者では、電力を中心とするエネルギー市場の仕組み、価格や需要の特性とモデル、リスク管理とデリバティブの利用方法等について、理解に必要なファイナンスや経済学の基礎を学ぶ。また、後者では、定量分析に必要となる回帰分析や時系列分析につき、屈曲需要曲線、気温変動の非線形効果、国際的エネルギー価格の国内電力市場への影響、電力先物市場でのリスクプレミアムなどの分析事例に基づいて身に付ける。
電力自由化により、多くの企業が電力市場に参入する一方、その取引や価格の決定は市場に委ねられることとなった。その中で、再生エネルギー発電の増加や脱石炭による電源構成の変化、ディマンド・レスポンス等の需要管理技術の発展は、価格や需要の特徴を大きく変えつつある。電力価格や需要の評価とリスクの把握・管理を定量的に行う知識と技術が、電力市場に係る経営にこれまでになく必要とされている。本講義は、そのために利用されるファイナンス、経済学、データ分析の基礎知識を提供することを目的とする。
本講義を履修することによって次の能力を習得する。
1) 電力市場の仕組みと電力供給者・需要者が直面するリスクを説明できる。
2) 電力の価格・需要の変動特性、決定要因、他のエネルギー価格との関係を説明できる。
3) リスクの評価と管理、そのためのデリバティブの利用方法等について説明できる。
4) 電力市場データを用いた予測や因果推論のデータ分析を実践できる。
電力価格、需要、リスク、デリバティブ、データ分析
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
電力市場で現実に起きていること、参加者が直面する課題を把握し、その解決に向けてファイナンス、経済学、データ分析の知識をどのように利用するか、社会的課題と学問的方法の間を往復しながら解決方法を探ることへの理解を深めます。なお、エネルギー関連事業に携わる外部スピーカーを招聘することも検討している。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | (大橋)電力市場の仕組みと電力供給者・需要者が直面するリスク | 価格変動の意義、供給者・需要者が直面するリスクを理解する。 |
第2回 | (山本)ソフトウェアの基礎、線形回帰モデルと日本の電力市場データへの応用、屈曲需要曲線 | 統計パッケージソフトウェアRを用いて線形回帰分析を行い、エネルギー価格や電力市場のデータから因果を推論できるようになる。 |
第3回 | (大橋)電力の価格・需要の変動特性、決定要因、他のエネルギー価格との関係 | 電力価格・需要の変動特性と決定要因、他との関係を理解する。 |
第4回 | (山本)気温変動と電力市場、国際的エネルギー価格と日本の電力市場 | 線形回帰分析で季節性などの非線形要因の影響を考慮できるようになる。また、基礎的な時系列データを用いて国際的なエネルギー価格変動が日本の電力市場に与える動学的影響を分析できるようになる。 |
第5回 | (大橋)電力価格・需要に関するリスクの評価と管理、そのためのデリバティブの利用法 | リスクの評価と管理、デリバティブの利用方法を理解する。 |
第6回 | (山本)電力先物市場のリスクプレミアム | 日本の電力先物市場データを用いて、価格予測モデルの構築とリスクプレミアムの計算および解釈ができるようになる。 |
第7回 | まとめとQ&A |
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する 予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
講義資料はシステムで共有する。
参考書はトピックが広範に及ぶため、講義の中で適宜紹介する。
電力市場に関するトピックを自分で選び、問題意識を議論したうえでデータ分析に基づいた結論を出し、7~10ページくらいにまとめたレポートで評価する。
ミクロ経済学、統計的推論(推定や仮説検定)に関する基礎知識、ソフトウェア(R)関する基礎知識があれば望ましい。