2021年度 エネルギービッグデータ科学演習   Big Data in Energy: a practical introduction

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開講元
エネルギー・情報卓越教育課程
担当教員名
伊原 学  MANZHOS SERGEI 
授業形態
演習     
メディア利用科目
曜日・時限(講義室)
火5-6  
クラス
-
科目コード
ENI.I401
単位数
1
開講年度
2021年度
開講クォーター
3Q
シラバス更新日
2021年10月5日
講義資料更新日
-
使用言語
英語
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講義の概要とねらい

本講義では、エネルギーに関わる「データ科学とAI解析」をエネルギー・ビッグデータ科学と定義し、エネルギー変換、エネルギー貯蔵、エネルギーシステムなどの技術開発に応用する力を身につけることを目的としている。脱炭素社会構築に向けて、なぜ、データサイエンスが有用なのか、そして、関係するさまざまなデータ処理・解析の手法について解説する。さらに、これらの手法を、エネルギー材料開発に活用するエネルギーマテリアル-インフォマティックス、および、集中型と分散型のエネルギーシステムが共存し、エネルギービッグデータを活用して最適化する将来のエネルギーシステムにおけるデータ解析例などについて学修する。また、本講義では、東京工業大学キャンパス内で開発・実証を行うエネルギーシステム「エネスワロー」から実際のデータを取得し、解析に利用する。以下に、講義・演習における具体的な内容について示す。
1) 脱炭素社会構築に向けたエネルギーに関する展望(現在と将来):現在の電力グリッドやエネルギー貯蔵に関する技術、そして持続可能なエネルギー関連技術について。また、新たな技術の発展に伴うデータのもつ重要性について。
2) いくつかの機械学習の技術を含む、ビッグデータ科学(データ科学とAI解析と定義)における主要な手法について
3) 先進的なエネルギー変換や貯蔵技術の開発の鍵となる、機能性材料について。エネルギー材料開発における情報科学の利用、エネルギーマテリアル-インフォマティックスについて。
4) 脱炭素社会構築に向けた系統協調/分散型エネルギーシステムにおけるエネルギーデータの活用について(ビルエネルギーデータの活用、電気自動車データの活用など)

学生は、エネスワローからの実在のデータを用いて講義に取り組む。大学のネットワークに接続した自身のPCを用いてシミュレーション等の演習を行う。また、プログラミングなどを行なったことがない学生でも理解できるように解説する。
本講義に参加可能な学生は、最大40名である。また、履修可能人数を超過した場合は、東京工業大学エネルギー・情報卓越教育院に所属する学生が優先される。

到達目標

エネルギー情報に関する課題を解決する、データ分析の手法について理解し適用することができる。機械学習のツール(手法やソフトウェア)や、エネルギー関連技術によって生じるデータの分析に有用な手法を理解し活用することができる。重要なエネルギー変換・貯蔵技術に関連するエネルギー材料の基礎を理解することができる。

キーワード

再生可能エネルギー、太陽電池、蓄電池、データ科学、ビッグデータ、機械学習、エネルギー・ビッグデータ科学

学生が身につける力(ディグリー・ポリシー)

専門力 教養力 コミュニケーション力 展開力(探究力又は設定力) 展開力(実践力又は解決力)
専門力、実践力、課題解決力

授業の進め方

各回の授業は100分のうち、講義(講義時間の1/2から2/3)と演習(講義時間の1/4から1/3)、課題(約15分)に分かれている。数回の授業はマスタークラス形式(教員がPCで実際に行って見せた手順を、続いて学生が自身のPCで実行するような方法)で行われ、そのほかは従来通りに行われる。演習は、講義で解説したデータ分析の手法やツールを使って行う。評価は、演習のレポートや小テストで行い、教員と学生間に意見交換を行いながら進行する。

授業計画・課題

  授業計画 課題
第1回 脱炭素に向けたエネルギー社会の展望とコースの概要(伊原教授): 従来のエネルギー変換・貯蔵技術と、より優れた持続可能なエネルギー関連技術について、また、新たな技術の発展に伴う、データがもつ重要性の増大について説明する。系統協調/分散型リアルタイムエネルギーシステムの概要と、再生可能エネルギー関連技術における機能性材料の役割の拡大について説明する。 メジャーなエネルギー変換技術(石油、天然ガス、原子力、風力、太陽光、燃料電池)と貯蔵技術(揚水、蓄電池)のエネルギーミックスにおける役割と発展性について学ぶ。現代の従来の技術の間の原理的な違いと、それに伴うデータ分析やマネジメント、新規エネルギー材料の重要性について学ぶ。
第2回 主要なデータ科学分析技術といくつかの機械学習の手法の紹介---回帰分析、主成分分析(P C A)などの概要について---(Manzhos准教授、伊原教授): ニューラルネットワークとディープラーニングについて、ガウス過程回帰を例としたカーネル法について、線形/非線形モデルにおける次元削減について、また、クラスタリングについて講述する。それぞれの手法の利点と欠点についても解説する。 演習1:授業で紹介した手法を、Python環境上で実行する方法を学ぶ。 ディープラーニングを含むニューラルネットワークやGPRのようなカーネル法の実践的な基礎と、それらの手法の利点と欠点について学ぶ。 特徴量で構成された複数次元空間における非線形分析、非線形の次元削減、非線形クラスタリングの利点について学ぶ。
第3回 先進的な発電・エネルギー貯蔵技術の開発に重要なエネルギーマテリアルについて パート1(Manzhos准教授、伊原教授):再生可能エネルギーの面からの材料紹介 再生可能エネルギーに用いられる機能性材料の種類と界面、電子材料、インターカレーション材料、触媒、ナノ材料、低次元材料とそれらの界面について。光吸収、電子やイオンの輸送、重要な反応を含む、中心的な機能を支配する現象などについて講述する。 演習2: webなどからデータを取得する方法を学び、統計学的な分析に向けた処理を行う。 エネルギーマテリアル-インフォマティクス上で触れる様々なデータと、それらを用いて機能性材料を合理的にデザインする手法について学ぶ。実際に演習を行い、単純な線形回帰の限界と、より複雑な手法、特に機械学習に基づく手法の必要性について学ぶ。
第4回 先進的な発電・エネルギー貯蔵技術の開発に重要なエネルギーマテリアルについて。パート2(Manzhos准教授、伊原教授):材料開発の情報科学的な側面、 望む特性と記述子のマッピング、記述子の選択について講述する。燃料電池における電極材料や太陽電池材料を例に解説する。 演習3:触媒材料の組成とその活性について提供されたデータセットを用いて、機械学習を行い、組成から活性などの性能を予測する。 エネルギーマテリアルインフォマティクス上で触れる様々なデータと、それらを用いて機能性材料を合理的にデザインする手法について学ぶ。実際に演習を行い、単純な線形回帰の限界と、より複雑な手法、特に機械学習に基づく手法の必要性について学ぶ。
第5回 系統協調/分散型リアルタイムエネルギーシステムにおけるデータ解析例 パート1(伊原教授、Manzhos准教授):東京工業大学「エネスワロー」からのデータ取得と予備的解析 演習4:「エネスワロー」のクラウドデータサーバーに送られた電気自動車からのデータ、および、多数の太陽電池、燃料電池、ガスエンジン、蓄電池、エネルギー消費デバイス棟を含む東京工業大学EEI棟からのエネルギーデータを取得する。また、取得した電気自動車の位置情報データを使って予備的な解析を行う。 様々なデバイスを含む将来の系統協調/分散型エネルギーシステムおよびデータについて演習を通じて学ぶ。
第6回 系統協調/分散型リアルタイムエネルギーシステムにおけるデータ解析例 パート2(伊原教授、Manzhos准教授):EEI棟エネルギービッグデータのデータ構造分析の一例 演習5:演習4で取得したEEI棟のエネルギービッグデータを分析する。K-means法等を用いたクラスタリング分析を行う。高次元なラベルなしデータと少数のラベルありデータを用いて、取得されたデータの概要を推定、考察する。 非常に高次元なデータを用いた分析を行い、データのもつ意味をデータ分析から特定する手法を学ぶ。エネルギー変換の知識とクラスタリング手法を適用し、取得したビッグデータの概要を推定する手法を一例として学ぶ。また、本講義の全体像からエネルギービッグデータ科学とは何かを学ぶ

授業時間外学修(予習・復習等)

学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する 予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。

教科書

なし

参考書、講義資料等

Chapters from:
Fundamentals of Materials for Energy and Environmental Sustainability, Eds. D. S. Ginley, D. Cahen, Cambridge University Press, 2011, ISBN:9781107000230
A. Vieira da Rosa, Fundamentals of Renewable Energy Processes (Third Edition), Academic Press / Elsevier, 2013, ISBN: 978-0-12-397219-4
Articles from research literature.
Reference books, agency reports, and original course materials.

成績評価の基準及び方法

演習およびレポートで評価する。

関連する科目

  • ENR.A401 : エネルギー基礎学理第一
  • ENR.A403 : エネルギーデバイス論第一
  • ENR.A404 : エネルギーデバイス論第二
  • ENR.A405 : エネルギーマテリアル論第一
  • ENR.A406 : エネルギーマテリアル論第二
  • ENR.A407 : エネルギーシステム論
  • ENR.B431 : 燃料電池・太陽電池・蓄電電池・エネルギーシステムの最新技術

履修の条件(知識・技能・履修済科目等)

なし

連絡先(メール、電話番号)    ※”[at]”を”@”(半角)に変換してください。

伊原 学, mihara[at]chemeng.titech.ac.jp
Sergei Manzhos, Manzhos.s.aa[at]m.titech.ac.jp

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