重要作家・作品の紹介を兼ねつつ、敗戦・被占領期を中心にした戦後文学の意義と可能性を再検討する。取り上げる作家は、火野葦平、坂口安吾、太宰治、野間宏、椎名麟三、武田泰淳、埴谷雄高を予定。各作家の戦前・戦中体験も踏まえながら、各作家の「本質」に迫る。対象はあくまで戦後文学だが、現代の文学状況まで見通すパースペクティヴは保持しながら進める。
戦後文学は戦争・敗戦体験の「意味」を最も深く潜り抜けた文学だが、その「重さ・暗さ・難解さ」のために、1980年代以後の「明るさ・軽さ・わかりやすさ」の時代に読まれなくなった。「震災以後」の現代に、戦後文学の魅力と可能性を伝えたい。
・ガイダンス
・火野葦平の誠実と「転向」……敗戦・戦後の意味
・坂口安吾と太宰治……「無頼」ということ
・野間宏「暗い絵」……実存から「全体」へ
・椎名麟三「深夜の酒宴」……ニヒリズムからユーモアへ
・埴谷雄高「死霊」……存在・意識・革命
・武田泰淳「滅亡について」……中国という「他者=女」
必要なものは事前にコピー配布するが、以下のエッセイ・小説(いずれも中短篇)は自分で読んでおくことが望ましい。
・坂口安吾「堕落論」
・太宰治「如是我聞」
・野間宏「暗い絵」
・椎名麟三「深夜の酒宴」
・埴谷雄高『死霊』自序(これはコピー配布する)
・武田泰淳「ひかりごけ」
初回の共通ガイダンス(すずかけ 4/9、大岡山 4/12)に出席のこと。
出席と期末レポートでの総合評価。レポートは3,000字以上とする。
連絡先:世界文明センター(内線3892)