記号機能の哲学的探求   The Philosophical Inquiry into Semiotic Functions

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担当教員
菅野 盾樹 
使用教室
火3-4(W934)  
単位数
講義:2  演習:0  実験:0
講義コード
99315
シラバス更新日
2010年4月7日
講義資料更新日
2010年3月22日
学期
前期

講義概要

記号主義哲学(すなわち哲学としての記号論)からいえば、人間とは環境と相互作用しあう知覚=運動系に他ならない。人間の認知や行動はそれ自体〈記号過程〉(semiosis)として把握可能であり、人間のあらゆる営み(経済的、政治的、宗教的、儀礼的、藝術的など)は本来的に記号系の働きである。その上、近年の自然科学ないし生命科学は物質現象とりわけ生命現象が基本的に〈記号過程〉に基づくことを明らかにしつつある(例えば遺伝、免疫)。記号主義哲学は、それゆえ、人間中心主義と混同されてはならない。

講義の目的

この講義の目的は、一方で記号主義哲学を背景にしつつ、また他方でソシュールとパースの記号論的業績を批判的に踏まえつつ、しかもソシュール=パース以降における顕著な記号論的達成の一端を明らかにすることである。とりわけ「記号の指示機能」を原理的に解明しその成果を種々の記号現象に敷衍することを目指したい。
古典的な〈記号〉の定義によれば、「記号とは、それ以外のものを指示する(表す、代表する、指す、等)ところのものである。」それでは、指示の機能とはどのようなものか、それにはいくとおりの形態があるのか、それぞれの形態を規定する構造要因は何なのか…本講義においては、これらの問いを解明し、さらにいくつかの具体的事例を考察することになるだろう。
本講義が、ひとり社会理工学や情報工学のみならず、〈記号〉や〈情報〉が――明示的あるいは黙示的に――キーコンセプトになりうる広範な領域で学ぶ受講生に多少とも裨益することを期したい。

講義計画

本講義はネルソン・グッドマン(Nelson Goodman, 1906-1998)の業績を素材にして、科目担当者による講義に、基本文献の講読と受講生による議論を組み合わせることで営まれる。
取り上げられるトピックの例: 言語機能、ヴァージョン、世界制作、真理と正しさ、スタイル(様式)、実在性、主題、引用、藝術と科学、運動の知覚、事実、外延指示、例示、表出、指示理論、多元主義、語りと示し、パラ言語、作品、等。

教科書・参考書等

ネルソン・グッドマン『世界制作の方法』ちくま学芸文庫、2009年第2刷。その他の文献については、講義の進行にあわせて指示する。

成績評価

その都度の課題遂行(出席点を含む)と期末の課題(形式については未定)を総合して判定する。

その他

連絡先:世界文明センター(内線3892)

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