社会を交換のシステム(互酬、略取・再配分、商品交換)という枠組みで解釈することで、信頼の醸成、内集団びいき、フリーライダーと制裁、掠奪者と防衛など、普遍的な社会現象をモデル化してゆく。そしてこれをベースに、システム科学的な観点から、共同体、ネーション、国家等の創発に関して議論を深めてみたい。
エージェント・ベース・シミュレーションは、社会の複雑さの背後にある非線形なミクロ・マクロリンクを初めて思考の対象にし得るという点で、社会科学に対する新しい研究アプローチである。現在、政治学、国際関係論、経済学、経営学、等、社会科学の諸領域で、この技法の導入が進んでおり、従来の言説研究を超えた新しい社会科学が生まれつつある。本講義は、エージェント・ベース・シミュレーションを使って始まりつつある様々な社会理論のフォーマライゼーションの最前線を提示し、同時に、既存の言説(学説)との比較対照を行いながら、複雑な社会をシステム思考で洞察する力を涵養する。
#1 社会と歴史をシステム科学する。
<互酬のシステム(1) ~共同体という現象~>
#2 万人の万人に対する闘争状態
#3評判による信頼システム
#4 集団的直接互酬システム-政治的なるもの
<互酬のシステム(2) ~ネーションという現象~>
#5 内集団びいきの不思議
#6 所属シンボルと集団内評判による信頼のシステム
#7 ネーションの起源(古典古代ポリス論など)
<略取・再配分のシステム(1) ~国家という現象~>
#8 共有地の悲劇―公共財の供給問題―
#9 生産と制裁の分業による生産システム
<略取・再配分のシステム(2) ~国家という現象~>
#10 収奪国家の不思議
#11朝貢による防衛システム-税金の起源
<シミュレーション社会科学の最前線 ~未踏の領域~>
#13 商品交換システム-貨幣・市場・資本
#14 現代社会を読み解く-地域通貨、社会的企業家
#15 リアリティの捉え方-社会システム論、非線形科学そして実証?
#16 道徳・倫理・宗教へ、実践・政策科学へ
特になし
前期の「社会シミュレーション」を受講していればより望ましい。
レポート提出。シミュレーション・モデルか経験的検証に関する提案書を作成してもらう。