経営の歴史と理念   History and Philosophy of Management

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担当教員
鈴木 良隆 
使用教室
月11-12(CIC913)  
単位数
講義:2  演習:0  実験:0
講義コード
36026
シラバス更新日
2011年4月8日
講義資料更新日
2011年3月23日
学期
前期

講義概要

本講義は、この100年間の日本企業の歴史のなかから、重要な局面やトピックを取り上げ、企業変革の諸論理や、そこでの人びとの行動様式の意義について学ぶ。講義をとおして、経営の歴史を2つの視点から見ることとするが、この2つの視点に「経営の歴史」と「理念」という講義タイトルの意味が込められている。

1つは、客観的な事実の観察から導き出された「企業変革・発展の諸論理」の視点である。歴史で起こってきたことは、一つひとつがすべて異なる。1つの発展理論を導き出す前に、どのように、なぜ、それらは互いに異なるのか、それらは1つの論理で説明できないとしたら、いくつかに類型化できるのだろうか。こうしたことを問いながら、なぜ企業というものが存在するか、企業とは何か、といった問題について考える。企業発展の諸論理は、それら企業群が置かれたマクロ環境によっても異なってくることがわかる。

いま1つは、自分を「当事者の立場に置いて」ものごとを見る、という視点である。一連の歴史を客観的な過程として、自分から距離を置いて説明するだけでなく、自分自身をそれぞれの局面に置いて説明を試みてみる。当事者は、自分の選択が将来の客観条件のなかでどのような結果をもたらすかを考えて意思決定を行う。判断は当事者によって異なる。意図したとおりの結果となることはまずない。意図せざる結果は歴史のつねである。では当事者の意図に意味がないかといえば、そうではない。もし当初の意図が別ものだったとしたら、結果もまた当初の結果とは異なってくるだろう。そういう意味で意図は1つの原因をなしているのだが、この「意図」を生み出す重要な要因が、判断を異にさせる要因が「理念」である。

以上のような視点に立って、100年前における大企業の誕生や中小企業の群生から、現代における大企業の興亡に至るまで、またそれぞれの局面における「企業者」「技術者」「従業員」などの行動様式について、基礎的な、しかし通念を疑うような事実をもとに考える。あらかじめ討議資料を配付し、重要な論題を出しておくので、資料を読んだうえで問題を考えてくる。

講義の目的

経営の歴史は、法則的知識を使って結果から原因を究明するだけでは不十分であり、各局面における当事者の立場に自分自身を置き、将来の客観的条件を予測しながら選択を行ったその過程をたどる必要がある。「理念」は、この選択を左右するうえでの最も基本的な要因である。あらかじめ配付される討議資料を読んで、所定の論点について討論を通して考え方を修得する。

講義計画

1 経営史の視点: 企業者の経営構想/現代企業の特徴/大企業の相対化
2 現代企業の出現: 日本における大企業の登場/日本企業と雇用/日本企業の発展方向/経営組織
3 技術者: この日本的なるものの出現
4 産業化と中小企業: 二つの中小企業/桐生の織物産地/製陶業の構造と革新/産業地域の形成
5 戦時経済と企業: 重工業化と協調融資/下請企業の系列化/雇用の一体化/経営管理の連続と断絶
6 雇用と企業内システムの確立: 年功制・終身雇用/従業員のコミットメント/TQC/職場集団
7 日本の大企業: 地位/戦略の類似性・同質性
8 日本の大企業(2): 日本電気と富士ゼロックス/管理手法の導入/組織構造
9 日本の大企業(3): 目標と行動様式の検証
10 大企業をめぐる金融システムの形成
11 大企業と中小企業: 取引システムの形成
12 大企業体制の解体: 大企業の存亡/中小企業の破滅/金融の壊滅/政策的基盤
13 自立する中小企業
14 大企業体制後の大企業 ―存亡の条件: 格差の拡大/企業目標の転換/差異性の追求
15 まとめ

教科書・参考書等

討議資料を配付する

関連科目・履修の条件等

とくに定めない。

成績評価

レポートに授業時間中の討論を加味する。レポートは、1題を選択し参考文献を読んで作成する。

担当教員の一言

討議資料についての質問に答えながら私が30分ほど話し、残りを重要な論点の討議にあてる。

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