技術経営を実践する際には,環境や技術革新等の不確実性に起因する複雑なリスク要因をファイナンスの観点から,具体的に定量化しなければならない。とりわけ資産や負債の価値変動に直接関係する金利変動リスクや,債権のある取引先の財務安定性に関するリスクをどのように定量化し,管理するかは無視できない重要な問題である。
本講義では,以下のようなリスクを定量化する手法について解説する。
・ 金融資産(株式,債券)や負債の価格変動や流動性に関する市場リスク
・ 取引先の不渡りや倒産,それにともなう損失を扱う信用リスク
・ ヒューマンエラーやシステムエラーに関するオペレーショナルリスク
について一般的な考え方および具体的な計量化手法を解説した上 で,実際のデータを用いてリスク計量から管理に至る一連のプロセスを経験し,理解を深める。
1. Introduction & Guidance (4/12) : 講義内容についての説明とオリエンテーション
2. リスクと確率 (4/19) : リスクを定量化するために不可欠な確率の概念の説明
3. 市場リスク(1) (4/26) : 市場取引される金融資産のリスク
4. 市場リスク(2) (5/10) : 複数資産の場合のリスク
5. 市場リスク(3) (5/17) : 資産ポートフォリオの構築(演習)
6. 市場リスク(4) (5/24) : 金利リスク・流動性リスク
7. 信用リスク(1) (5/31) : 信用リスクの計量化とその手法
8. 信用リスク(2) (6/7) : 決算情報を用いた信用リスク評価 (1)
9. 信用リスク(3) (6/14) : 決算情報を用いた信用リスク評価 (2)
10. 信用リスク(4) (6/21) : 決算情報を用いた信用リスク評価(演習)
11. 信用リスク(5) (6/28) : 与信のプライシング
12. オペレーショナル・リスク (7/5) : 低頻度高損失リスクへの対応
13. その他の様々なリスク (7/12) : 天候リスクやビジネス・リスクなどへの対応
特に指定しない。参考文献等を必要に応じて講義中に提示する。
特になし。ただし、高校数学で学習する確率や期待値(平均)の考え方を知っていることが望ましい。
いくつかの課題に対するレポート内容によって評価する。平常点も考慮する。
講義では多少の数式を扱うが、数式を理解するよりも、リスクを計量化することの大切さと難しさを理解してほしい。
講義に関する WEB ページの URL は
http://www.craft.titech.ac.jp/~nakagawa/dir2/lecture.html