21世紀の材料科学の革新的なブレークスルーをめざして,有機や無機のような分野別に発展してきた物質・材料を分子素子や分子マシンのような超高機能システムに組み上げる学問体系が必要である。集積分子工学は,分子を究極のユニットとして組織化する分子システムと構造微細化によって新たな機能・物性が期待されるメゾスコピック材料を自在に配置・集積・組織化する方法論を開拓し,拡張型の分子材料科学の基盤を整備することを目標としている。具体的には,高分子,金属錯体,分子結晶,金属,半導体に至る各種物質の機能と物性の統合・集積化を「分子回路工学」や「ナノ複合材料工学」などを題材に概観する。
集積分子工学の目標は、分子をユニットとして組織化する分子システムとその構造微細化によって、新たな機能・物性が期待されるメゾスコピック材料を自在に配置・集積・組織化する方法論を開拓し,拡張型の分子材料科学の基盤を整備することである。
本年度の講義では、「電子移動が関わる先端材料」を中心テーマに、5つのトピックスを例に電子移動の原理、制御、材料化を理解し、黎明期の研究から先端研究の現状、さらに今後の展望について講述する。
講義計画(トピックス名、小項目2つ、基礎事項)
1.(3回)トピックス1;「色素増感太陽電池」
・分子の励起状態
・光誘起電荷分離
【基礎事項】 光と分子
2.(3回)トピックス2;「有機半導体光触媒」
・エキシトン生成
・界面の電子移動
【基礎事項】電子移動反応
3.中間試験
4.(3回)トピックス3;「ブロックコポリマーリソグラフィー」
・精密加工技術
・ボトムアッププロセス
・精密重合
【基礎事項】高分子の相分離
5.(3回)トピックス4;「バイオテンプレートプロセス」
・テラヘルツ分光
・めっき
【基礎事項】 金属と電磁波の相互作用
電子移動の化学―電気化学入門 ( 渡辺 正 中林 誠一郎 )朝倉書店 1996
大学演習 熱学・統計力学(久保亮五)裳華房
基礎高分子科学 高分子学会編 東京化学同人
Principles of Molecular Photochemistry (N. J. Turroほか) Univ Science Books 2008
ボール物理化学 上・下(田中一義 阿竹徹)化学同人
アトキンス物理化学 上・下(千原秀昭 中村亘男)東京化学同人
Atkins & de Paula Physical Chemistry 10ed. Oxford 2014
特になし
毎回クイズ形式の5分間小テストによる出欠と期末試験
(出席・小テスト:50点、中間・期末試験:計50点、70点以下は希望者レポート)
各トピックスの先端研究の学術基盤には、それぞれ学部時代に学習した物理化学の基礎を含みます。これらは、修士論文研究の専門分野を問わず習得すべき基礎事項なので、本講義の先端研究の視点から眺め、深い理解を目指しましょう。