スピンオフ特論   Topics in Commercialized Technology "SPINOFF"

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担当教員
小田原 修 
使用教室
金1-2(J232)  
単位数
講義:2  演習:0  実験:0
講義コード
97024
シラバス更新日
2012年10月4日
講義資料更新日
2012年10月3日
アクセス指標
学期
後期

講義概要

 宇宙開発のような国家的事業として推進する研究開発で培われる要素技術を、民間産業に転用し私たちの日常生活に役立てることを「スピンオフ」と言います。宇宙開発のスピンオフ技術から生まれた製品を生活の身近な場面で数多く見ることができます。例えば宇宙服の開発分野では、相変換マイクロカプセルによる吸熱や放熱を利用した快眠布団、冷却下着用の水冷技術を活用した防護服、アルミ蒸着マイラーを組み込んだ建築分野での断熱シートなどのスピンオフ製品が生まれています。次世代宇宙服研究開発でも、安心・安全を最優先に開発してきた従来の宇宙服に、軽量・快適の機能を付与した日本的風土が培う精緻な技術を駆使して取り組むことで、非日常と日常との間を円滑に繋ぐ日本的スピンオフが充分芽生える、との期待が技術開発のモティベーションともなります。
 小学校へ入学したときに感じた学校の大きさが、卒業の頃には小さく思えた、という記憶を多くの人は持っているのではないだろうか。中学校や高等学校時代も同じような感じだったと思います。「教育」を通して習得すべきことは、まさにこのような感性であって、そこへ至る過程での「知識」の取得は一つの方法にすぎません。自分自身の先に存在するものを自分が許容できる大きさに調整することが、「教育」であり、「教育を受ける」というより「我が道を探し究める」ことに他なりません。ヒントは「そこ」にあります。
 “宇宙”に漠然と興味を抱く学生に、「ウルトラマンは地球では重すぎてストーリー通りの動きはできないはず」、と教えられたことがあります。“微小重力”は、地上での生活が“日常”である場合には、“非日常”の環境であり、その体験は非日常性という観点からも大きな興味を抱かせます。体験した環境が「予想通りであったか否か」、が興味のポイントであって、“予想通り”である時、人は突然解説者然となって、その人自身があたかも“微小重力”あるいは“宇宙環境”を理解した気になってしまいます。“宇宙”が夢あるいはフィクションであった時代には、そのようなにわか解説者も受け入れられたでしょうが、“国際宇宙ステーション”や“船外活動”という言葉が日常的に使われる今日では、その環境が“日常”の一場面になり、より深遠な挑戦が要求されるようになりました。
 実際、パソコンやインターネットや携帯電話や衛星放送が利用されている日常では、望ましい「自分」は「知識」ではなく「知恵」で形成されるという認識を大事にしなくてはいけません。朴訥(ボクトツ)でも、「自分」の置かれた環境と「自分」の現状の能力とのバランスを理解し、安きに流れず「自分」を鍛練し、その力で誠実にぶつかってこそ、そこに知恵が備わり“「個」としての真の「自分」”が形成されるようになります。
 「理解する」の英訳は一般的に[understand]ですが、[under-]と[stand]から類推すると、「下に立つ」ことになります。「理解する」と訳される英語には [comprehend]もあります。これは、[com-]と[prehend]として類推すると、「まとめて掴む」になります。
 「理解する」とは、どちらの認識になるのでしょうか?
 本講義では、「下に立つ」だけの理解ではなく、目先の対象に振り回されない一人一人の感性・価値観の育成を目指します。

講義の目的

 宇宙利用・探査計画を推進するためには、多くの要素技術を集約させシステム化した研究開発が必要です。そのような研究開発の骨格には、すでにある製品やアイディアを応用して生み出される技術開発(スピンオン)とともに、宇宙開発事業で生み出されたノウハウを社会に還元させる技術開発(スピンオフ)があります。
 本講義では、私達の日常生活に浸透している製品や技術の中にある数多くのスピンオフ事例を紹介しつつ、今後の「宇宙利用・探査計画」を展望し、優れた洞察力で新しい物事に挑む選球眼の育成を図ります。

講義計画

01.  挑戦と閃き、「スピンオフ」への導入 10/03(金曜日授業)
02.  研究開発に必要な起承転結の概念 10/12
03.  課題設定型研究開発の魅力、興味、展開 10/19
04.  創造的って何?−「大学」と「中庸」 10/26
05.  「総合科学」で目指す目標 11/02
06.  セレンディピティの認識-日常と非日常 11/09
07.  研究開発と社会環境−科学技術の風土 11/16
08.  新しい宇宙利用の展開-次世代宇宙服 11/21
09.  軌道上実験の意義、そして次の一手 11/30
10.  過去は今、今は未来の宇宙観         12/07
11.  国際宇宙ステーション利用の展望 12/14
12.  国際協調と月・惑星探査の展開 12/21
13.  スピンオフよもやま話(昨日) 01/11
14.  スピンオフよもやま話(今日) 01/25
15.  スピンオフよもやま話(明日) 02/01
16.  「地球圏低軌道」を越えて 02/08
17.  (予備日) 02/15

教科書・参考書等

特になし

関連科目・履修の条件等

修士1年の履修が望ましいが、その他の履修も歓迎します。

成績評価

試験(02/15実施予定)及びレポート

担当教員の一言

☆ 講義内容は多岐にわたりますが、授業日毎に完結します。
☆ 本講義の履修により、知識も然ることながら知恵が備わることを期待します。

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