パーソナルゲノム解析が現実のものとなり、バイオ情報学は転機を迎えている。これまでは、種としてのゲノム解析が中心であったが、パーソナルゲノム解析においては、個人のゲノム上の変異が疾患や薬物応答にどのように影響するかが問題となる。次世代DNAシークエンサーの出現により、個人ごとのゲノム配列を調べることが夢ではなくなった。高密度DNAアレイや高感度質量分析計の開発により、トランスクリプトーム、プロテオーム、メタボロームといったオミックスデータをゲノムワイドに測定することも可能となった。膨大なオミックスデータを横断的に解析するためには、生命現象に関する用語と知識を体系化したバイオオントロジーが必要となる。生体分子がおりなす遺伝子発現ネットワーク、代謝ネットワーク、シグナル伝達ネットワークなどのバイオネットワークの動的な振る舞いを理解するためには数理モデリングと数値シミュレーションが必要となる。
本講義では、パーソナルゲノム解析に焦点を当て、ゲノム上の変異と表現型の変異とを結ぶためのバイオ情報技術について俯瞰する。本講義では、バイオ情報学を学ぶために必要となる基本概念およびドメイン知識の修得に注力する。ダイナミックプログラミング、隠れマルコフモデル、自己組織化マップ、サポートベクトルマシンなど生命現象を解明するために有用なアルゴリズムや情報処理技術は多数知られているが、それらを用いれば、生命現象が解明できるというものではない。真の問題を解くためには、生物学の視点から適切な方法論や情報処理技術を選択できるだけの生命現象に関する「生命知識」をまず持つ必要がある。本講義ではこの生命知識の修得を目的とする。
4月11日 講義概要
18日 パーソナルゲノム解析
25日 ゲノム変異解析
5月 9日 疾患遺伝子解析
16日 トラスクリプトーム解析
23日 プロテオーム解析
30日 メタボローム解析
6月 6日 代謝ネットワーク解析
13日 バイオオントロジー
20日 モデリング
27日 遺伝子発現制御ネットワーク解析
7月 4日 シグナル伝達ネットワーク解析
11日 薬物代謝解析
18日 薬物動態解析
25日 総合討論
電子情報通信レクチャーシリーズD-23
バイオ情報学 -パーソナルゲノム解析から生体シミュレーションまで―
電子情報通信学会(編)
小長谷明彦(著)
コロナ社
講義毎に、課題レポートを電子メールで教官宛に提出
総合討論で期末レポートの課題について発表
期末レポートを7月末までに提出
出席日数 30点満点 (出欠日数で配分)
課題レポート 30点満点 (提出回数で配分)
課題レポート 40点満点 (内容で採点)
ゲノム解析、疾患遺伝子解析、薬物動態解析に興味ある学生は是非とも聴講してください。
背景知識がなくても、どなたでも聴講できるように、一から教えます。
メールアドレス
kona@dis.titech.ac.jp
件名に「生命知識論問い合わせ」の文字を入れてください。