社会サービスシステム設計論   Design in Social Service Systems

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担当教員
出口 弘  小山 友介  田沼 英樹 
使用教室
木3-4(J2-1601)  
単位数
講義:2  演習:0  実験:0
講義コード
94058
シラバス更新日
2013年10月9日
講義資料更新日
2013年9月20日
学期
後期

講義概要

 この講義では、FALCON_SEED- Framework of ALgebraic COmpilatioN for Social, Economical & Enterprise Data という、我々の開発したデータ処理言語を用いる。
 ここでは組織のデータ構造は2種類の代数的な構造を持つオブジェクトとして扱われる。一つはデータベースでもしばしば用いられるレコード型のデータである。これはデータ代数という部分代数として抽象化されている。もう一つは企業会計で用いられる複式簿記形式のデータであり、これは交換代数という代数により公理的に特徴づけられている。これらの二つのデータ形式で組織の中を流れる構造化されたデータの大部分は表現できる。
 組織のデータ処理は、これらの代数的構造を持つデータオブジェクとが、様々な変換を受けながら流れていく、分散ストリーム処理として記述される。数バイトから1億レコード程度までのデータフローがデスクトップで扱えることを具体的に示しながら組織のデータ処理を扱っていく。
 講義では、まず簡単なレコード形式のデータ処理を学習する。更に講義では、複式簿記のデータを用いて、会計データの処理のモデル化を行う。そのために複式簿記を抽象化した交換代数と言う代数系を学ぶ。また複式簿記によるダブルエントリーのデータ記述という状態記述法が、既存のストックフローによるシングルエントリーの動的システム記述に対して如何なる意味での拡張になっているかを、公理と事例によって説明する。講義のこの部分は、最短での理工系のための簿記の入門にもなっている。
 更に具体的な事例として、小さなビジネスについての会計処理を事例に、分散ストリーム計算でこれを処理する方法を学ぶ。ここではMQTTサーバを用いる、Publish and Subscribe(Pub-Sub)というデータの自律分散型のシェアリングの技術に我々の代数的なデータ処理(フィルター処理)を加えた、我々がPub-Sub-Calcと呼ぶ分散ストリーム計算の枠組みを学ぶ。
 更に数主体からなる小さな経済システムの全トランザクション(経済交換)を簿記を抽象化した交換代数で表現し、交換代数ベースのデータ処理がどのようなものであるかを学ぶ。また抽象化されたダブルエントリーのシステム記述の考え方を用いて、環境やエネルギーに対するサービス一般の記述が、如何に簿記(交換代数)によるダブルエントリー記述で表現されるかなど既存の簿記概念が、抽象化により容易に拡張でき、更にそれを分散ストリーム計算のデータ処理システムにより容易に実装できることを学ぶ。具体的事例として、例えば環境簿記(産業廃棄物の様なマイナスの価値を持つバッズを含む簿記的記述)やエネルギーサービスを対象としたエネルギー簿記を対象に、ファルコンシードとSOARSを用いたプログラム作成も行う。
 最後にグループワークで適当なビジネスプロセスの事例をもとに、そこでのデータ処理を交換代数とデータ代数で表現して、ファルコンシードとPub-Sub-Calcの分散ストリーム計算で表現する、ビジネスプロトタイピングを行う。

講義の目的

この講義では組織や社会のデータ処理を講義と実習形式で扱う。企業等の組織や社会を流れる様々なデータとそこでのデータ処理、データ変換のプロセスを設計する事は、人工物としての社会経済システムをデザインするためには必須の技術である。本講義では、既存のデータベースアプローチとは異なる、分散ストリーム計算によるデータフロー計算の新たな手法を具体的に身につけながら同時に経営や経済のデータ処理をビジネスプロセスや経済システムの小さなモデルのプロトタイピングを通じて学ぶ。

講義計画

参加者と協議の上、実習計画等を定める。

教科書・参考書等

適宜配布する。

関連科目・履修の条件等

社会サービスシステム創出論

成績評価

出席と実習レポート

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